PK(伊坂幸太郎)の書評・感想

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PK

本書は、相互に若干の繋がりを持たせた3編の短編が収録された作品です。

「PK」
ワールドカップの予選で、決勝点となるPKを決めた選手について、未だに尽きることのない噂がある。新人大臣の頃に人助けをしたことがある大臣が、苦境に立たされている。「お父さんには、次郎君という友達がいたんだ」という話をして子育てをする父親。編集者ではない謎の人物から、作品の修正を「お願い」される心配性の作家。

「超人」
浮気をしたために別居状態となり、友人であり作家でもある三島の家に来ている田中は、ちょうどやってきた警備会社の営業マンの話を一緒に聞くことになった。
彼には特殊な能力があるという。
始まりは、サッカーの試合結果を教えてくれるメールマガジンからのメールだった。当初はごく普通のメールだったのだが、ある時そのメールに、見知らぬ人物の名前、見知らぬ住所などが書かれるようになった。
意味がわからなかったが、次第にそれが何の「情報」なのかわかってくる。
営業マンはその「情報」を元に、あることをしている。「予知能力があるのです」というその営業マンの言葉を、三島も田中も、どう捉えたらいいのかわからない。

「密使」
ある日突然、自分に特殊な能力が備わっていることに気づいた男は、しかしその能力のあまりの些細さに、有効利用を諦めていた。ほんの少しだけ、人よりも時間を多く過ごせる、というだけだ。何がどう出来るわけでもない。
ある男は、謎めいた研究所に呼ばれた。そこで彼は、パラレルワールドについての説明を受ける。時間蟻や量子論の話が入り交じる、どこに着地するのかよくわからない話だ。どうもその研究所では、未来を変えるための様々な計算をしているようではあるが。

というような話です。
やっぱり伊坂幸太郎は良い話書くなぁ。こういう、色んな要素がするするっと収まるべきところに収まっていくような作品は、やっぱり好きですね。
僕は本書の3編のうち、「密使」だけは「NOVA」というアンソロジーで読んでいました。単発で読んだ時ももちろん十分面白かったんですけど(しかし、「NOVA」を読んだのはそこまで大昔というわけでもないのに、やっぱり内容をすっかり忘れていて、初読であるかのように楽しめたのでした)、こうやって3編揃って読むとまた面白さが違いますね。
書籍化に辺り若干手を加え、三編の繋がりを強化した、みたいなことがあとがきで書かれていました。
読んでいると、なるほどなるほど、この話があれと繋がるんですね、まさかなるほどこれがああだったのか、みたいな遊び心みたいなのが結構随所にあって面白いです。
3編とも、「個人という小さな単位では太刀打ちの出来ない、しかし表立ってその存在を感知することが出来ない強大な組織」というものを背景に置いていて、こういうのは「ゴールデンスランバー」とか「モダンタイムス」とかでもそうでしたけど、なんとなく最近の伊坂幸太郎の十八番だなって感じがします。もしかしたら人によっては、「その強大な組織」が表に出てこない、作中で説明されないことにあまり納得しにくい読者もいたりするのかもしれません。そういう意見を耳にしたことがあるような気もするし、まあそういう感想があってもいいかなとは思います。でも、僕はいいなぁ、と思いますね。僕らが生きている世界も、やっぱそうだよなぁ、って思ったりするんです。

感想

あと、伊坂幸太郎のエッセイ「仙台ぐらし」を読んでいたから、「PK」の中で出てくる作家のベースは伊坂幸太郎なんだろうなぁ、なんて思って楽しく読みました。奥さんもホントにこんな感じの人なんかなぁ。
震災後に発売された「群像」で発表された作品だったこともあって、雑誌で読んだという人もいることでしょう(この雑誌掲載に関する誤解を、伊坂幸太郎はあとがきで書いています)。でも、3編まとめて読むと、また違った感じに読めるのではないかなという感じがします。やっぱり伊坂幸太郎は面白いです。是非読んでみて下さい。

PK

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