砂の王国(荻原浩)の書評・感想

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砂の王国(上)

三人のホームレスが、宗教団体を作り上げる物語だ。
41歳の山崎遼一は、所持金が3円になってしまった。大手証券会社の花形部署にいた山崎だったが、少しずつ歯車が狂いだし、妻は去り、住んでいる場所を手放し、ホームレスになった。しかし、まだ望みは捨てていなかった。ネットカフェを泊まり歩き、携帯電話で派遣の仕事をし、ある程度の資金があればまたビジネスでも立ち上げられるだろう、と思っていた。路上で暮らすようにはなったが、自分はまだまだそこまで落ちぶれちゃいないと思っていたし、一般的なホームレスと同じように扱われることが癪だった。
しかし、ネットカフェで大金を盗まれてからは、そんなことも言っていられなくなった。残飯を漁り、ダンボールにくるまって公園で寝る生活が始まった。しかし、ホームレスの世界も楽じゃない。住みやすい場所はやはり人が集まるし、人が集まれば序列が出来る。路上で生活するようになったばかりの山崎には、なかなか落ち着ける場所は見つけられなかった。
その公園に行きあったのは、たまたまだ。ガタイのデカイホームレスが一人いるだけだった。しかし、用心は怠らない。こんな拾い公園を一人で占められるなんて、もしかしたらあのホームレスは相当にヤバイやつなのかもしれない。
少しずつそのホームレスと関わるに連れ、仲村という名のそのホームレスの非凡さを知ることになった。
まず、容姿が恐ろしく整っている。そこらのモデルよりもはっきり言ってカッコイイ。その容姿を活かしてなのだろう、コンビニを回れば廃棄弁当を喜んで分けてくれる人間が実に多い。山崎は、仲村のおこぼれに預かる形で食料を手に入れられるようになった。
その公園にはもう一人、宿なしの男がいた。「錦織龍斎」というペンネームで辻占いをしているペテン師だ。初め占ってもらった山崎は、その天才的な占い能力を信じかけてしまったが、しばらく彼の占いを見ている内にわかった。人間観察や話術のテクニックは素晴らしいが、要はペテンだ。
彼らは、お互いに持ちつ持たれつの関係のまま、日々をどうにか生きていった。山崎も、もうプライドを捨て、ホームレスとして、生きることを最優先に日々をこなすようになっていった。
が、やはり山崎はこのままではいられなかった。社会に逆襲する方法を考えていた。日々、生きていくための様々な努力をしながら、考え続けた。
そして山崎は、仲村と錦織をうまく使うことで、一世一代のビジネスを立ち上げることにした。
宗教だ。
仲村を教祖に仕立て上げ、錦織にカウンセリングをやらせる。町の小さな集会場から始まった「大地の会」は、山崎の予想を超えて大きくなっていく…。
というような話です。
さすが荻原浩、やっぱり面白く作品でした。荻原浩の作品は、描写力があるんで、グイグイ読まされてしまうなぁといつも思います。

感想

個規模がでかくなると、あとは、まあ組織が大きくなった宗教団体はまあこんな感じだよね、なんて思えてしまう描写が多くて、だからそれまでの組織をいかに大きくしていくかという部分の方がやっぱり面白かったかな、と思う。
終盤で、物語は大きく転換し、木場はまた人生の選択を余儀なくされる。まさに「砂上の楼閣」という感じで、儚いまま散っていく感じが悲しいですね。
人間の欲望は計り知れないし、集団は巨大化すれば制御できなくなる。そんな当たり前の真理を、『ホームレス』と『宗教』という枠組みの中で描き出す作品です。ホームレスという立場で社会を見なければ見えてこないものの存在や、あるいは宗教というものがどんどんと巨大化して形を変えて行く過程なんかが面白いと思います。ちょっと長いですけど、荻原浩の作品なんでやっぱりグイグイ読まされてしまいます。是非読んでみて下さい。

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