ゼロからトースターを作ってみた(トーマス・トウェイツ)の書評・感想

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ゼロからトースターを作ってみた

本書は、イギリスのロイヤル・カレッジ・オブ・アート(王立芸術大学)大学院在学中にスタートさせた、超奇妙奇天烈な「トースター・プロジェクト」のスタートから顛末までを本人が書いた作品です。常に進行状況をブログで発表していたようで、そのブログをまとめたような感じの本なんだと思います。ブログで発表していた頃から、ニューヨーク・タイムズやワイアード・マガジンなどから注目を浴びた、なかなか斬新なプロジェクトです。
さて、一体彼は何をやったのか?(やろうとしたのか?)
それは、まさにタイトルの如く、「ゼロからトースターを作ってみた」というのである。
では、『ゼロから』というのはどういう意味か?
それは、『原材料から』という意味だ。
つまり、部品の一部として鉄が必要であれば、鉄鉱石を掘り出し、そこから鉄を抽出するところから始める、というのだ。
完全なるアホである。完膚なきまでの天才的なアホである!
そんな天才的なアホが、夏の卒業制作展までの9ヶ月間を掛け、移動距離3060キロ、1187.54ポンド(約15万円)の費用を掛けてトースターの製作に挑んだ、その記録である。
ざっと書けば内容はこんな感じです。
このアイデアだけでマジで天才的だなと思いました。いや、それだけじゃないな。思いつくことは思いつけるかもしれない。でも、こんな途方もないくだらない(!)プロジェクトを、最後の最後までやり通したっていうのも素晴らしいじゃないですか。『発想』と『継続』が天才的過ぎるなと思いました。だって、思いついたって、こんなこと普通最後までやり遂げないでしょう?
そういう意味で、ブログで発信し続けていたというのは重要な要素だろうな、という感じがしました。やるぜ!って宣言しちゃって、ちょくちょく更新を続けちゃったら、もうやり抜くしかないですよね。
著者は、やはり一人の知識ではやり切ることは出来ないと、色んな専門家の元へ行って助言をもらうんですけど、初めにプロジェクト全体の無謀さについてアドバイスを請うた教授から、何故トースターなのか?と聞かれる。それに対して著者は、『必要か必要でないかのボーダーライン上にあるものの象徴がトースターなんだ』というような持論を展開する。
どういうことか。
元々電気機器というのは、昼間の電気需要を創出するために生み出されたのだという。発電所が出来た当初の電気需要は、昼間はさっぱりで夜は増えるという感じだったのだけど、電気は溜めたり発電量を調節したりすることが難しいから、需要がない時間帯も一定以上の電力を生み出さなくてはいけない。だったら、昼間の需要を創出すればいいということで、電気機器が生み出されたと著者は書きます。
それからの人類の努力の大部分は、ほんのもう少しの快適さを追求するために費やされてきたと著者は言います。そうやって、トースターも生まれた。でも、別にトースターぐらいなくたって生きていけるんじゃないか?それがなくても生活に支障を来さないような製品がたくさんあるのではないか?
そんなものの一つであるトースターを作ってみることで、著者は、自分たちがこれまで歩んできた「必要さを追い求める歴史」に疑問符を打とうとしたのだ。
さて、著者は三つのルールを設定してこのプロジェクトに取り組んだ。

感想

著者は、自分の手でトースターを作って見て、店で売っているトースターの値段の安さに改めて驚き、そして疑問を抱きます。これは結局、地球がコストを負担しているだけなのではないか、と。そういう視点で、店に並んでいる製品を眺めることが出来た、という意味でも、非常に面白いプロジェクトだったなという感じがします。
バカバカしさ満点の作品ですけど、思いがけず考えさせられる部分もありました。天才的なアホが無謀なプロジェクトに挑む、その果敢さを是非堪能してみてください。

ゼロからトースターを作ってみた

ゼロからトースターを作ってみた

  • トーマス・トウェイツ

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