夏服パースペクティブ(長沢樹)の書評・感想

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夏服パースペクティヴ (樋口真由“消失”シリーズ)

本書は、青春学園ミステリとして絶賛を浴びたデビュー作「消失グラデーション」の続編です。前作で出てきた樋口真由がまた登場します。
遊佐渉は、都筑台高校2年生。映画研究部の部長だ。部長とはいえ、部員は二人。しかも、内一人は幽霊部員。
幽霊部員である樋口は、遊佐は惚れ込んで見つけて無理やり引っ張ってきた逸材だ。『bloody-May』という名前で動画サイト中心に作品を発表している人物を見つけた遊佐は、その才能に惚れ込んだ。撮影場所などから執念で樋口にたどり着き、強引に部に勧誘したのだ。
そんな遊佐に、ある話が舞い込んできた。
幼馴染であり、名門・葦原女学院高校の映画研究部に所属する御津矢秋帆から、とあるプロジェクトに参加しないかと話が来たのだ。
主にセミノンフィクション系の映像で第一線を走り続ける真壁梓。葦原女学院のOGでもある彼女が、また新たな構想を持って映像作品に取り組むのだという。
それが、HAL Projectのプロモーションビデオの撮影をする撮影チームを撮影するセミノンフィクションだ。
HALは、着実にファンを増やしつつある音楽ユニットであり、丘崎春花と矢窪日菜子は共に葦原女学院の生徒だ。
さらに、彼女たちの人気に拍車をつけたのが、御津矢が撮るプロモーションビデオである。歌とルックスと映像の魅力が相まって、彼女たちは着実に人気になりつつある。
HALは「空蝉乙女」という新曲を出し、そのためのプロモーションビデオを撮影する。しかしそこに、真壁梓が絡む。真壁が何を企んでいるのかはよくわからないが、撮影スタッフの不和を引き起こし、撮影現場にドラマ性を生み出してそれをセミノンフィクション風に撮影しようという意図であるようだ。
その撮影スタッフの募集が急遽あり、これまでの実績を提出してオーディションをすることになった。遊佐自身オーディションを受けるつもりだが、樋口にも声を掛けることに。しかし樋口は、曖昧な返事のままオーディションには顔を出さない。
そして撮影。3日間の合宿を組み、廃校となった中学校を舞台に撮影がスタートする。HALのプロモーションビデオの撮影は、何故かこれまで映像作品にタッチしたことのない、葦原女学院映画研究部部長であり、文芸班チーフである永井美鈴が務め、御津矢は撮影監督となった。「ラブティーン」の読者モデルである佐伯圭史や、プロダクションに所属する女優・名塚佐織らも加わり、少ない人数の中で誰もが何役もこなしつつ、撮影が進んでいく。
しかしそこで、『事件』が起こる…。
というような話です。
デビュー作の「消失グラデーション」も斬新な作品でしたけど、本書もまあぶっ飛んでる感じの作品でした。物語の始まりはちょっと尖った学園小説っぽい感じなんだけど、突然本格ミステリっぽくなる。しかも、恐ろしく複雑な設定で物語が進んでいくのだ。さらに、最終的に本格ミステリの範疇からははみ出してるだろこれ、というような展開で、なんというか油断を許さない作品だなぁという感じがします。
本書の斬新な点は、映像撮影中に起こる事件が『架空の事件だ』ということだ。これは、とても説明が難しい。
遊佐らHALのプロモーションビデオ撮影メンバーは、当然HALのプロモーションビデオを撮影するスタッフだ。しかし彼らは同時に、真壁梓の新作「夏服とフリッカー」という作品の登場人物でもある。さらにその外側に、撮影とは関係ないリアルの世界が存在する。

感想

僕の方にあんまり時間がないのと、本格ミステリ的な部分にはあんまり触れられないのとで、ちょっと感想が短い感じになっちゃったけど、これは凄く面白い作品だなと思いました。ただ、映像的な描写が多く(映像を撮ってるっていう設定だから仕方ないけど)、その辺りでちょっとイメージしにくい部分もあったから、これは映像にしたら面白いかもなぁなんて思います。実際、「夏服とフリッカー」みたいな、プロモーションビデオ撮影を外から撮るセミノンフィクションみたいな映像も、見てみたいですしね。個人的には「消失グラデーション」の方がオススメですけど、本書も凄い作品だと思います。是非読んでみてください。

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