傷だらけの店長(伊達雅彦)の書評・感想

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傷だらけの店長: 街の本屋24時 (新潮文庫)

本書は、実在の元書店店長が、「伊達雅彦」というペンネームで業界紙に連載していた文章を一冊にまとめたものです。
内容は、書店の店長として働く中で経験したこと、感じたことなどを赤裸々に綴っている、エッセイのような感じの体裁です。
「伊達雅彦」は、とある小規模な書店の店長だ。アルバイトでその店で働き始めた。本が好きすぎたからだ。父親に勘当されながらも、そのままアルバイトから社員となり、いくつかの支店を回った。そしてやがて、彼がアルバイトとして働き始めた、そもそもの原点となる店舗の店長となった。
悪戦苦闘の連続だった。
言うことを聞かないで勝手をする古参アルバイトスタッフ。一向に減らない万引き犯。減らされ続ける人件費と、それに反比例するように増える残業・休日出勤。競合店の出店。やってもやっても終わらない業務。
しかし何よりも彼は、『書店』の姿が変わっていってしまうことを憂えていた。
効率重視、ランキング重視、そういうデータばかりに頼った品ぞろえの書店ばかりになってしまっている。そうせざるを得ない事情は理解できる。どこも業績が悪化して、書店の意義だとかそんなことに構っていられる余裕なんかないのだ。売れるものはなんでも売るしかないし、自分の主義を曲げて売り場を作らなくてはならないことがとても多い。
しかし彼は、そんな現状を嘆く。どうにかならないのか。どうしてこうなってしまったのか。俺が作りたい売り場は、本当にこんなものなのか?
彼は、一人の書店人として、真摯に『本』と向き合い、可能な限り限界まで努力をした。その奮闘の記録です。
なんというか、どんな風に何を感じたらいいか、とても難しい作品だなと感じました。僕自身も、「伊達雅彦」とはまったく立場も経験も何もかも違うとはいえ、一応書店員であるので、色々考えさせられました。
その色々考えさせられたことを、なかなかここにスパっと書くわけにはいかないんだろうなぁ、という感じがします。そんな感じになったのは、以前、石橋毅史「「本屋」は死なない」を読んだ時にも思った。「「本屋」は死なない」を読んだ時は、感想は書いたけどブログには上げない、というやり方をした。今回は、モヤモヤとしたまま、自分が感じたことをズバッと書くわけにはいかないと思いつつ、書けそうなことだけダラダラ書いてみようかなと思っています。
まず本書を読んで、一番強く感じたことは、

『なんだか申し訳ない』

という感じでした。誰に対して申し訳ないと思っているのか、そういうことははっきりとはよくわからないんだけど、でもとても申し訳ない気分になりました。
僕は今、書店員という仕事を楽しんでやっています。
これは、「伊達雅彦」との立場や書店の違いが非常に大きいでしょう。僕は店長でも社員でもないただのバイトだし、書店の在り方としても、基本的に放任主義というか、ただ放ったらかしにされているだけなんで、やりたいようになんでも出来る。他にも、たぶん僕自身はある意味でかなり恵まれている環境にいるのだろうなという感じがするんで、かなり状況は違う。
同じ書店員でも、ここまで違うのか、という感じがした。
僕が普段から関わることがある方にも、書店の店長職の人はいる。様々な規模の様々なタイプの書店の店長だ。そういう人達が、どんな風に何をしているのか、僕はよく知らないままでいた。本書とまったく同じということはないだろうけど、同じようなことをやっているのだろうなと思うと、やっぱり店長って凄いなと思う。ウチの店の店長にはまったくそんなこと思わないけど。

感想

僕自身とは大きく境遇の違う方の奮闘記を読んで、何を感じたらいいのか難しい部分もあった。本書への批判も思いつけば、本書への賛同も思いつく。書店員以外の方が読んだら、どんな風に読まれるんだろう。
忘れたくないなと思うのは、こういう方が、こういう悩みを抱えながら、それでも前に進もうとしてきた、という事実です。たぶん僕は書店員として、そういう事実だけは、忘れちゃいけないんだろうなと思う。

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