辺境ラジオの書評・感想

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辺境ラジオ

本書は、大阪の毎日放送で不定期に放送されている「辺境ラジオ」というラジオ番組を書籍化した作品です。
まず、「辺境ラジオ」というラジオ番組について説明してみます。
このラジオ番組は、なかなかに変わった番組のようで、次のような特徴があります。

・だいたい3ヶ月から半年に一度くらい、突然放送される
・放送枠は、普段何も放送されていない週末の深夜、放送業界でいう「放送休止枠」である
・いつ放送されるかは当人たちもよくわかっていないが、「そろそろだよね?」という息は不思議と合う。

なんというか、よくそんな企画が通るなぁと思うし、内田樹と名越康文っていう結構なネームバリューの二人を連れてきてそんな扱い(っていう表現もおかしいけど)っていうのも凄いし、それに公開録音とかもやってるんだけど、そんないつ放送されるのかもわからないラジオ番組をちゃんと追っかけている人がいる(公開録音には静岡から参加の方もいたそうです)っていうのも凄いなと思います。
内田樹と名越康文については、まあ大体の人が大体知っていると思いますけど、一応ざっくりと。内田樹は、長く大学教授を務め教育に携わる一方、武道を長いこと続けてきて、退職後は「凱風館」という道場を作り弟子の指導に励んでいる。名越康文は精神科医として一日に多くの患者を相手にしながら、テレビ・ラジオなどに積極的に顔を出す。両者とも、著作は多数ある方々です。
西靖というのは、毎日放送のアナウンサー。毎日放送創立60周年記念企画の一環として「60日間世界一周の旅」を行い、それは書籍化されてもいる。二人の知の巨人の会話を、「へぇそうなんですかぁ」という立ち位置で巧く操り、二人から「鵜匠」と呼ばれる。
そんな三人によるラジオ番組を書籍化した作品なんですけど、これがもうメチャクチャ面白かった!
内田樹の作品は時々読んだことがあって、その明快な主張とか分かりやすい説明なんかに凄く納得して感銘を受けることが多いんで、内田樹にはとても期待していたんですけど、名越康文も凄くいい。正直僕の中で、名越康文って、なんとなく胡散くさい印象があったんです。精神科医とかカウンセラーみたいな人をそもそも胡散くさいものとして見ている、っていうことなんだろうと思うんだけど、なんとなく出版している本のタイトルなんかを漠然と見ていると、うーんという感じの違和感を覚えることが結構あったんですね。まあ、著作は読んだことないんで、完全に先入観なんですけどね。
でも、名越康文も、内田樹と張るほどの知性の持ち主なんだなぁ、ということが分かる作品でした。
二人の話は、レベルはとても高いんだけど、高尚すぎるという印象はない。高い位置に土俵があって、何をやっているのか見えない、みたいな感じには全然ならない。そうじゃなくて、僕らと同じような目線の場所で話が展開されていく。なんとなく、「難しい言葉や言い回しを駆使することが知性だ」みたいな錯覚に陥ってしまうことってあるけど、内田樹と名越康文の会話を読んでいると、あぁやっぱり違うな、難しい言葉や言い回しを使わないで高いレベルの話が出来るというのが本当の知性なんだろうなぁ、なんて風に改めて思わされます。

感想

内田『でも、本当にそうですよね。暗い気持ちで下した決断はほとんど間違っている。明るい気持ちの時は自然過ぎて、そもそも何かについて重大な「決断する」というような局面に遭遇しないから』

内田『人間がよくわからないまま「昔からこうだったから、このままでやっていこうよ」といって何千年もずっと維持してきたものは、ある日壊してしまうと、もう二度と同じものは作れないんです』

とても素晴らしい作品だと思います。是非読んでみてください!

辺境ラジオ

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  • 内田樹,名越康文,西靖

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