王妃の帰還(柚木麻子)の書評・感想

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王妃の帰還

舞台は、お嬢様学校として知られている聖鏡女学園の中等部。お金を持っている父親と、専業主婦の母親というセットが基本で、「働いている母親なんて」と蔑まれるような環境の中で、範子たち四人はある種異端児ではある。
ノリスケ(前原範子)は、女性誌の編集長を務める母親と二人暮らし。チヨジ(遠藤千代子)は、新聞社の整理部で働く父親と二人暮らし。スーさん(鈴木玲子)はなんと、聖鏡女学園大学の理事長にして名物教授である父を持つ。リンダさん(リンダ・ハルストレム)は、建築家夫婦として有名なスウェーデン人の父と日本人の母を持つ。四人は、クラスの中でも最下層のグループだったが、四人でいる空間の居心地の良さは何にも代えがたいほどで、中等部二年から高等部卒業までクラス替えのない彼女たちにとっては、とても安泰な環境である。
はずだった。
そんな穏やかな秩序を、「王妃」が崩しさってしまったのだ!
王妃というのは、ノリスケだけが心の内でだけ呼んでいる名前で、クラス内の最大権力グループのトップに立つ超絶美貌の少女なのであった。滝沢というその少女に、ノリスケは憧れていた。歴史好きな彼女は、マリー・アントワネットが大好きで、滝沢さんに王妃マリー・アントワネットを重ねてうっとりしていたのだった。
ついこの間までは。
クラスでとんでもない事態が持ち上がった。なんと王妃が、安藤さんのバッグに自分の時計を忍ばせて、盗人呼ばわりしたと、学級会で糾弾されたのだ。その瞬間、王妃は泣き、陥落した。
それは、クラスの底辺として、クラス内の派閥争いにまるで関与して来なかったノリスケたちに、驚愕の変化をもたらすことになる。
なんと、王位がグループから追放されて、その受け入れ先としてノリスケたちのグループを検討しているというのだ!
まさか!憧れの王妃と喋れるのはドキドキするけど、でもあのとんでもない性格の女の子とどうにか仲良く出来るだろうか。っていうか、これまでの穏やかな日常を壊すようなことは止めてほしい!
…とは言え、結局王妃をなし崩し的に受け入れることになった彼女たちは、自分たちが王妃とはまるで違うと思い知らされ、またこれまでの穏やかだった日常が案の定グチャグチャに崩されていく日常を体験することになる。
そしてノリスケたちは決意するのだ。知恵を絞って作戦を立てて、私たちの手で、王妃を城に戻そう!と。かくして「プリンセス帰還作戦」が展開されるのだが…。
というような話です。
柚木麻子の作品を読むのは二度目ですけど、やっぱり面白いなぁ!なんとなく印象として、柚木麻子の作品には「白柚木」と「黒柚木」があるイメージがあって、僕はたぶんまだ「白柚木」の作品しか読んでいないような気がします。本書も、恐らく「白柚木」に分類していい作品でしょう。悪意はそこかしこに充満しているのだけど、でもなんかとても良い話です。

感想

これがなかなか面白い作品です。ヒエラルキーが高い層に今でも特別関心が持てないというか、どちらかというと嫌悪しちゃう天邪鬼な僕としては、ノリスケら四人は凄く好きだし、時間が経つに連れて変化していく王妃も結構好きだったりします。何でみんな平等ではいられないんだろうね、なんていう嘆きが作中で登場するけど、ホントそうだよなぁって思います。まあ、分かる気もするけど。やっぱり、自分より下がいるっていう安心感も、自分より上は遠すぎて無関係っていう距離感も、集団が狭い空間で生きていく中で必要なものだし、そういう感情が最も出やすいのが教室なんだろうなという感じもしました。「地味キャラが陥落した王妃をまたクラスの人気者に!」っていう設定も凄く分かりやすいし、タイトルもまさにズバリっていう感じで、本を手に取らせるというところでのことも考えてるんだろうなぁ、という感じがしました。是非読んでみてください。

王妃の帰還

王妃の帰還

  • 柚木麻子

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