わかりあえないことから(平田オリザ)の書評・感想

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わかりあえないことから コミュニケーション能力とは何か (講談社現代新書)

本書は、劇作家として著名である平田オリザが、講談社のPR誌に連載し続けた文章をまとめた作品です。『コミュニケーション教育に直接携わる者として、そこに感じる違和感を中心に書き進めてきた』というスタンスがまえがきで書かれている。
とにかく素晴らしい作品だったんです!昨日僕は「恋とセックスで幸せになる秘密」という作品の感想の中で、「これまで読んできた本の中で最大のドッグイヤーをした」ということを書いた。ほぼ全ページの端を折ってしまったのだ。でも、本書も、それと負けず劣らずで、相当数のページをドッグイヤーしてしまった。
そんなわけで、この作品の素晴らしさを伝えたいところなんだけど、話が非常に多岐に渡るので、簡単には内容を紹介できない。というか、「コミュニケーション」というテーマを軸に、ここまで多様な話題に触れられるものなのか、そしてそれらを違和感なく有機的に結びつけて一つの作品として仕上げることができるのか、という点にとても驚かされたのでした。
そんなわけで、この作品の全体像に触れることは諦めます。まだ本書を読んでいないという方、作品のほんの一部にしか触れられないこんなブログの文章なんて読まないで、とにかく一刻も早く本書を手に入れて読み始めることをオススメします。
さて、このブログでは、『教育現場におけるコミュニケーション教育』というものに的を絞って、本書の内容に触れて行きたいと思います。実際本書では、「社会や企業で求められるコミュニケーション能力への違和感」、「著者が教育現場で実践してきた演劇的メソッド」「著者が教授として働く大阪大学での演劇的教育の実践」「医療現場や子供との会話などでの豊富な実例」「演劇における言葉と、それが何故社会で役立つコミュニケーション能力の育成に役立つのかという考察」「コミュニケーションをデザインするという試み」など、とにかく様々な話題がてんこ盛りになっている作品で、本書を読まなくていい人の存在を思い描けないほど、どんな人間にも関わりあいのある話題が提供されるだろうと思います。そもそも、「コミュニケーション」をしないで生きていられる人はいないわけです(引きこもりになる人だって、生まれたその瞬間から引きこもりになるわけではないでしょう)。「言葉」だとか「会話」だとか言った、あまりにも自然にある/やる存在であるが故になかなか意識できず、意識できないが故に「ずれ」が大きくなっていく「コミュニケーション」というものの本質について、本書は非常に多くの示唆を与えてくれる作品です。今から、『教育現場におけるコミュニケーション教育』というものを中心に色々書いていきますが、もう学校は卒業したしとか、別に俺は教師じゃないし、というような人にも本書は非常にためになる作品のはずなので、僕が書く内容に関わらず(だから、さっき言った通り、こんなブログの文章なんか読まないで)、是非今すぐにでも本書を読み始めて欲しいと思います。
本書ではまず、「若者のコミュニケーションにおける問題点」をはっきりさせようとします。そしてそれらは、当然のことながら、教育の問題と絡み合っていきます。
著者は、「意欲の低下」と「コミュニケーション教育は人格教育ではない」という二つの話をします。

『いまの子どもたちは競争社会に生きていないから、コミュニケーションに対する欲求、あるいは必要性が低下しているのではないか』

感想

コミュニケーションというのは、僕らの日々の営みであり、だからその変化は容易には見えにくい。平田オリザという、演劇から「ことば」や「コミュニケーション」を考え続けた人間だからこそ到達できた様々な知見は、なんとなく違和感はあるんだけど何がおかしいのかよくわからない、という僕らの感覚をうまく掬ってくれます。本当にこれは、凄い作品だなと思いました。是非是非是非読んでみてください!

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