プロメテウスの罠3の書評・感想

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プロメテウスの罠 3 福島原発事故、新たなる真実 (プロメテウスの罠シリーズ)

本書は、「プロメテウスの罠1」「プロメテウスの罠2」と続く、朝日新聞誌上での連載を書籍化した作品です。本作は、2012年6月9日から2012年10月22日までの連載が収録されています。
この「プロメテウスの罠」のシリーズは、松本仁一というかつて朝日新聞の記者として活躍し、現在はノンフィクション作家になっている人物が監修を務め、それまで国の情報をただ流しているだけに過ぎなかったマスコミ報道を改めようと、自分たちで取材して知り得た事実だけを書く、出来る限り事実だけを書く、というようなスタンスでずっと続けられている連載です。
昔、こんな図を見かけたことがあったなぁ、というのを思い出して、探してみました。

http://map.tools-etc.info/index2.html

日本全国にある原発を中心に、「半径◯kmの円」を描くことがが出来るサイトです。
これを使って、例えば半径150kmの円を書く設定にすると、ほぼ日本全土が埋まってしまいます。
放射性物質が半径150kmまで飛散するかはちょっと分からないけど、でも半径150kmってたぶん「心理的に離れていると思える距離」ではないと思います。原発から150km離れた土地を探そうとしたら、日本全土でごく僅かしかない。
僕らは、そういう国に住んでいます。
今回は、福島の原発がやられました。でもそれは、どこで起きたっておかしくはない。僕らはどうしても、特に被災地から遠ければ遠いほど、時間と共に震災のことを忘れていってしまう。僕もそうです。やっぱり日常の中では、なかなか自分の問題として捉えることは難しいです。だからこそ、こうやって時々本を読む。
震災や原発関連の本を読む度に感じることは、

『彼らが経験したことを、僕らは、自分たちの問題として議論しなくてはいけない』

ということです。
同じことが、いつか自分たちの身近で怒るかもしれない。そうなった時、今の何も議論がされていない状態では、同じことが繰り返されるだけでしょう。誰かにただ怒りをぶつけ、右往左往する(一応書いておきますけど、今回の福島の原発事故は、日本でほぼ初のケースだったでしょうから、福島の方々が誰かに怒りをぶつけ、右往左往しているのを批判したいわけではありません)。そうではなくて僕たちは、そこで何が起こったのか、今も継続してどんなことが起きているのかをちゃんと知って、そして自分の身近なコミュニティの中で、もしこんなことがあったらどうしようか、という議論をし続けていかなくてはいけないと思う。身近なコミュニティというのは、家族でもいいし、会社でもいいし、地域でもいいし、なんでもいい。そういう個々の場で、議論の機運が高まらないと、結局何度だって同じことは繰り返されるのだろうな、と思います。
まあ、こんなことを書いている僕にしたって、別に議論をするために動いているわけでもないし、結局何もしていないんで同じことなんですけどね。なかなか日本人の場合、こういう機運が高まりにくいよなぁ、と思います。
でも、別に本書じゃなくてもいいんだけど、原発や震災に関する本を読む人がどんどん増えれば(あるいはドキュメンタリーでも写真集でもなんでもいいです)、その本の感想を語り合うという形で議論が生まれるのではないかなと思います。そういう意味で僕は、原発や震災に関する本を読む価値を捉えています。なので、僕自身も継続的に原発や震災に関する本を読んでいこうと思うし、出来ればそう思ってくれる人が増えてくれるといいなと思います。

感想

それらを全部掬うことは出来ない。まだまだ知られていない現場は、被災地に山ほどあるだろう。でもこうやって、個人と地域がどうにか無理矢理にでも現場を回してしまう【現場力】は、素晴らしいと思うし、見習いたいと思うし、失ってはいけないなと感じました。
報道は、とても大きなものを報じる。本書は、普通の報道からは漏れてしまうような、スケールの小さな現場が描かれる。しかし、そこで見せつけられるのは、圧倒的な【現場力】だ。自分がもしそこにいたら…という想像を交えながら読むと、彼らの行動が、努力が、決断が、どれだけ凄まじいものだったのか、ほんの僅かでも理解できるのではないだろうか。そうやって、何が起こったのかを「ただ知る」ということも、とても大事なことだと思う。本書でなくても構いません。是非、時々でも、原発や震災に関係した本を読んでみて欲しいなと思います。

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