煌夜祭(多崎礼)の書評・感想

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煌夜祭 (中公文庫)

<語り部>と<魔物>が住む島・十八諸島。
イズー島を中心に、蒸気で浮かぶ島が円環状に連なる。生物も住めぬほどの死の海に囲まれ、蒸気船でお互いを行き来する。
冬至の夜、後夜祭と呼ばれる祭りが開かれる。語り部が集い、火を囲み、各々がこの国の真実や歴史を夜が明けるまで語っていく。
今夜も冬至。人々が絶えたターレン島に集った二人の語り部。島主を失った島で煌夜祭を開いても、褒美がもらえるわけでもない。
語り部は面をつけ、名を秘す。小鳥の仮面を被ったナイティンゲイルと、本物の頭蓋骨のような仮面を被ったトーテンコフ。
二人は、たった二人しかいない煌夜祭を始める。お互いに、十八諸島の歴史を語る。
何故冬至の日に煌夜祭が開かれるようになったのか?魔物とは、一体何者なのか?王位継承戦争で何が起こったのか。
様々な島で起こったいくつもの歴史を積み重ねていく中で、お互いがお互いの存在理由を見出していく冬至の夜…。
というような話です。本当は、形式的には連作短編集のような作品なので、それぞれの短編の内容に触れたいところなのだけど、ちょっと今回はあまり詳細に内容に触れない方がよかろうという判断をしたので、こんな感じの内容紹介にとどめておくことにします。
なるほど、これはよく出来た作品だなと思いました。何よりも構成力が抜群の作品だと思いました。本書は、十八
諸島という国を舞台に、『二人の語り部が煌夜祭の夜に語っている物語』が短編として7編収録され、その短編の合間合間に二人の語り部が語り合う、という構成になっています。この説明で通じるかなぁ。
以前、山本弘の「アイの物語」という作品を読みましたが、本書は「アイの物語」を連想させる構成だなと思いました。「連作短編集の外側に、その連作短編集を包み込むもう一段外側の世界が存在する」という設定の共通点ぐらいなものですけど、そういう設定の連作短編集をほとんど知らないので、この構成は非常に巧いと思うし、見事だなと思いました。
詳しいことはここでは書かないけど、本書は、短編(つまり、語り部が語る歴史)を読み進めていくにつれて、十八諸島や二人の語り部にまつわる様々な謎が提示され、そして明かされていく。それぞれの語りは、ほとんどの人にとっては繋がりを見出すことは難しいものだろうと思う。これを、ナイティンゲイルとトーテンコフの二人が語り合う。これこそに意味があるのだ。この二人の語り部が、煌夜祭の夜、たった二人しかいない島で歴史を語り合う。この設定が見事に転がり、二人の語り部が出会わなければ誰も知ることのなかっただろう歴史が浮き彫りになっていく。
本書では、<魔物>という設定が非常に重要で、かつ魅力的な存在として描かれていきます。魔物を取り巻く謎、というのが、本書の一番の大きな謎と言えるでしょう。
魔物は、昼の陽の中で出歩くことは出来ず、夜の世界でしか生きることが出来ない。どうやっても死ぬことはなく、死ぬことがあるとすれば、たった一つの方法しかありえない。魔物は人から生まれ、人と同じように育つが、しかしある時から魔物としての本性を表すことになる。そして魔物は、冬至の夜に、必ず人を喰う。

感想

そしてその歴史が、二人の語り部の前で着地を見せることになる。戦い続けてきた様々な歴史に終わりがやってくる。戦い続けてきた者たちの様々に渦巻く感情が唸り声をあげる。なかなか見事な物語でした。
圧巻はやはり、本書のメインの物語となるのだろう、「王位継承戦争」でしょう。お互いを守り合おうとして二人の勇敢な者たちが、最後まで諦めることなく戦い続けたその記録が、激動的に描かれていくことになる。
とにかく全体的に非常に構成力が高く、物語性豊かな作品だなと思いました。僕自身がそもそもファンタジーが苦手なので、この作品はファンタジーが苦手な人にもオススメ出来ると言うことができます。作品全体の構成力が高いために、一部だけ取り出してあれこれ言うのが難しい作品で、あまり内容に触れることが出来ないのが残念なところ。これがデビュー作だそうです。なるほど、ちょっとこの作家には注目してみようと思います。

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