田中素香の「ユーロ 危機の中の統一通貨」章別まとめ

2051viewsRionelRionel

このエントリーをはてなブックマークに追加
ユーロ――危機の中の統一通貨 (岩波新書)

1章ユーロの歩み

ユーロが果たした3つの役割
①経済統合を進展、②ユーロ圏経済の安定化、③ヨーロッパの基軸通貨・ドルに次ぐ世界第2位の通貨
①2008年に加盟していたユーロ圏15カ国の域内貿易は、ユーロ導入前のGDP比25%から33%へ上昇、対照的に非ユーロ圏(イギリスやデンマーク)とユーロ圏との貿易はGDP比でかなり大きく下落、ユーロ圏内で貿易促進効果を発揮。投資についてもホームバイアスが低下、南欧の不動産・住宅や消費ブーム、中東欧の新興国ブームを促進。
②ユーロ加盟のための物価安定化と加盟後の堅実な金融政策による安定化によって、経済安定に寄与。
③ユーロ圏16カ国の共通通貨/ヨーロッパ全域の為替相場の安定化を保障するアンカーとしての役割(ERM2への参加含む)、によって21世紀初頭のヨーロッパの通貨金融の安定化を保障。しかし、射程はあくまでヨーロッパ。

2章ユーロ導入までの道のり

(全半省略)

  • マルク本位制への転換

[EMSの外部環境は80年代後半には非常に厳しくなった。この構造的な危機に対処する道はマルクをEMSの基軸通貨として確立し、その周囲に他の西欧通貨が結集する方法しかなかった

[マルク本位制では、ドイツ連邦銀行は外国為替市場に介入して、マルクとドルの為替相場を誘導するが、EMSの相場安定は全面的に他の参加国に委ねる

[他のEMS通貨当局は、ドルに対して上昇するマルクについていかなければならない

  • 西欧の介入通貨もマルクになり、マルクが基軸通貨に。

[EMSにおいてマルクが基軸通貨となり資本移動の自由化が進むと、西ドイツの金融政策に他のEMS諸国は従属するほかなくなった=国際金融のトリレンマのうち自律的な金融政策が放棄された。

[EMSの前提は参加国の「対称性」だったのに、西ドイツだけが「自立的金融政策」を実施できる「非対称的な制度」となった。それをフランスは欧州中央銀行と統一通貨で打開しようと考えたのである。=決定権をドイツのものから欧州の共有物に。ドイツ統一がEC諸国に受け入れられるためのマルク放棄=政治的統一

  • 92年のEMS危機(最初の90年代型国際通貨危機、アジア通貨危機を参照)
⇒統一通貨によって為替相場を排除することで、危機の根本的克服

3章ユーロはどういう仕組みなのか

[(ドイツ連銀の伝統を受け継ぎ、)ECBの至高の政策目標は物価安定である。マーストリヒト条約と欧州中央銀行法に定められた法的な義務となっている。物価安定が達成されている限りにおいて、他の政策目標(雇用や経済成長)を支援することができる。

[上限金利によるECBの貸付残高、下限金利によるECB預金はリーマンショック後に急上昇している。

[ユーロの金融政策はジレンマを抱えている。すなわち、ある国にとっては金利が高すぎるために不況を深刻化させる一方で、他の国では低すぎてブームやバブルの膨張を助長させるということが同時に起こりうるのである。

[外国為替市場には原則不介入だが、ユーロ暴落の懸念がある時には4度介入を行った。

[金融監督機関については母国監督主義

4章世界金融危機とユーロ

サブプライム問題の表面化⇒パリバショック⇒アイルランドとスペインの住宅バブル破裂

[アイルランドの銀行危機はサブプライム関連は少なく、ほとんどは過度の住宅ローン、不動産デベロッパーへの過度の貸付によるものである。

[サンタンデール、BBVAというスペインの二大銀行は中南米を中心に展開していたので比較的健全だが、「カハ」と呼ばれる地方の中小貯蓄銀行の、住宅ローンが不良債権化しており、銀行危機への発展が懸念されている。政府は一行を政府管理下におき、45あるカハを集中合併させて10行程度に集約し、破綻を未然に防ぐ方針だが、地方ボスに牛耳られたカハの効率化が順調に進むかどうか注目されている。疑問:ドルビジネスに関与していないカハがなぜ住宅への積極投資に進んだのか?アイルランドのようにドル資金の調達が滞ったのでなければ、住宅価格の低下と危機を招いた原因は何か?

  • ヘッジファンドによるドル引き上げと円キャリー取引の解消から、サブプライム危機はドル高とそれを上回る円高を招いた。
  • 西欧の銀行支配(貸付ではなく進出)のため、中東欧危機は東アジアの通貨危機のようにはならなかった。
*参考:ドイツの住宅価格上昇率は2010年以降急上昇中であり、住宅バブルの可能性もあるかも。原因はユーロ危機のための過剰な金融緩和による流動性供給で資金調達が容易になったことか?

5章ギリシャ危機とユーロ存亡の危機

  • リージョナルインバランス
ユーロ加盟国の西欧北欧工業国と南欧諸国の間の競争力格差は拡大し、経常収支の黒字と赤字の拡大。物価上昇率の差が競争力の差となる。ドイツ企業・銀行は貿易で稼ぎ、投資でまた稼いでいた。

終章ユーロ再考

[条約は先進国(マルク圏諸国)通貨同盟を前提としていたのに、不適格なはずの南欧諸国が続々と加盟することになってしまったという設計図と現実のずれが、コアからペリフェリへという銀行資金の動きと危機発生後の深刻化を招いた。ドイツにとってソ連やアメリカと対峙するために西欧との連携は不可欠であったが、今や

[ドイツは欧州からとるべきものは全てとり、これ以上統合を進める必要がなくなった。「コア・ペリフェリ問題」を解決するための今後の制度改革として、

[公的資金の移転までを司る「経済政府」の創設と

[欧州通貨基金を創設してEFSFを引き継ぐ(=EMS)ことが必要。

関連まとめ

本のまとめカテゴリー


コメントを書く