天然ガスの有効活用と、エネルギー源の分散化が大切! 「エネルギー論争の盲点」とは

3142views折笠 隆折笠 隆

このエントリーをはてなブックマークに追加
エネルギー論争の盲点―天然ガスと分散化が日本を救う (NHK出版新書 356)

概要

著者は、エネルギー・環境問題研究所の代表を務めるエネルギーアナリスト。

311以降の「原発vs再生可能エネルギー」という二項対立による解決を否定し、
天然ガスの有効活用と、エネルギー源の分散化を主張する。

エネルギー問題はなぜ重要か

エネルギーとは人間の生存や活動に役立つ熱源・動力源のこと。

現代の都市社会は、安価で高効率・高密度のエネルギーを大量に投入し続けないと
巨大な人口や産業システムを維持できないようになっている。
だからエネルギー問題は重要。節電すれば済むと言った瑣末な話ではない。

そもそも電力という形で消費されるのは、エネルギーのわずか1/4前後。
だから電気だけを考えてもエネルギー問題は解決しない。

歴史的に見ても、優れたエネルギーが技術革新を生み、人口増を可能にした経緯がある。
例えば石炭は、その消費で作った工業製品でさらに石炭を掘削するという流れを生んだ。
従来の動力源(牛馬や風水車など)では成立しなかったこと。

技術革新の陰に化石燃料あり

エネルギーの価値を決める最も重要な指標は「産出・投入比率」。
産出物が持つエネルギー量と、産出するときに必要なエネルギーとの比率を示す。

ある程度掘削すると自噴する石油は、少ないエネルギー消費で手に入る優等生。
化石燃料が技術革新の主役となったのは、そのエネルギー効率に負うところが大きい。
一方で、太陽光・風力エネルギーの数値は低い。

また、石油に匹敵する優れた数値を「天然ガス」が記録することにも注目を。

エネルギー論争の不毛

エネルギー論争に出てくる、いくつかの誤解を指摘する。
・石油は近いうち枯渇する→違う。人類の石油総消費量は埋蔵量のまだ1/10以下
・火力発電の環境負荷は大きい→天然ガスコンバインドサイクル方式なら環境負荷は小さいはず
・CO2排出を国単位で考える→国内だけで考えても無意味。たとえば輸入製品は、実は輸出国でCO2 を大量消費して作られたもの。
・太陽光発電は効果的→気象条件に左右される。日本では、現実の出力はカタログ性能上の1割。

原発派も再生可能エネルギー派も、不都合な真実から目を背けているようにみえる。
原子力の発電コストは、廃棄物処理や事故のリスクを加えれば高い。
一方、太陽光発電は天候に左右され稼働率が低すぎる。先進国ドイツでも発電量の1%。

再生可能エネルギーはエネルギー密度が薄い(非効率)。
推進を否定はしないが、化石燃料に代わる主役にはなりえない。

「原発vs再生可能エネルギー」というメディアの二項対立には違和感がある。
どちらか一方に正解があるわけではないからだ。

現実的には、各エネルギー源の長所をうまく組み合わせて利用し、
安定性の確保とリスクの最小化をめざす最適解を探すことだ。
すべてを解決する、救世主のような代替エネルギーの出現は幻想にすぎない。

天然ガスの実力

優れたエネルギーとして推奨する、天然ガスのメリットを整理しておく。
・産出にコストがかからない。ガス井戸から自噴するため
・環境に優しい。CO2排出量が石油比70%
・資源量が豊富。現在の消費ペースでも数百年もつ
加えて化学肥料の生産にも、水素を多く含む天然ガスは向いている。
デメリットは気体であるため、輸送コストが高く扱いにくいこと。

日本は天然ガス後進国。シェアが15%と低い(米は25%、英伊40%)。
パイプラインのような天然ガスインフラ整備は、いまや中韓にも遅れをとる。

ここで天然ガス普及の後押しをするのがシェールガス革命。

シェールガスとは、シェール層という地層内の微細な隙間にたまった天然ガス。
技術革新により大量生産・コスト減が可能になった。
石油に比べ埋蔵地域は幅広く分布。天然ガスの可採年数は400年以上との試算もある。

21世紀型のエネルギー政策

原発の新規建設が困難な今、現実的なエネルギー政策を考えてみる。

(1)エネルギー供給者側の省エネ
石炭火力から天然ガス・コンバインドサイクル発電への移行で発電効率を上げる。
発電量が同一のままでも、CO2排出量が削減できる。コスト・効果とも現実的なはず。

(2)分散型コジェネレーションの活用
各工場・ビル・家庭などで、供給元と需要先を近接させたコジェネ(廃熱利用)を導入。
燃料電池も活用したい。不安定な再生可能エネルギーのバックアップにもなる。

エネルギーの安全保障については、以下に留意したい。
・エネルギーは国産にこだわる必要はない。重要なのは調達力。危機は備蓄と供給先の分散化で対応できる。
・リスクヘッジのポイントは多様化。地理的な分散(原料の輸入先)やエネルギー源の分散(石油一極集中にしない、など)が重要。

関連まとめ

本のまとめカテゴリー


コメントを書く