経営戦略の嘘! 「イノベーション」はビジネスの成功法則なのか?

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ヤバい経営学: 世界のビジネスで行われている不都合な真実

イノベーションって本当にいいこと?

ビジネス書でよく取り上げられる、「イノベーション」。このテーマに関してよく言われているのは、「イノベーションこそ、今日のビジネスにおける鍵だ」ということだ。イノベーションは素晴らしい。イノベーションにこそお金をかけるべきだ。イノベーションを起こす人たちは、いつも物語のヒーローだ。そのようなヒーローは、一般人には思いもつかない所でヒントを見つける。そして、周りの人がそんなものは無駄だと言っても、何かに頑固に執着する。そして、さまざまな苦労をしても、世間の声などは気にかけず、成功をめざすのだ。

確かに、イノベーションは素晴らしい。しかし、何かを信じて進んでいたにもかかわらず、幻想にすぎなかったり、成功しそうにもないことに無鉄砲に固執してやり続けたり、失敗するまでただ苦労を続けたりする、そんな哀れなヤツたちのことは、ほとんど聞くこともない。本当は、そんなヤツらも多くいるだろう。イノベーションを生み出す革新的な会社は本当に良いのか。このテーマに関するアカデミックな研究を見ると、はっきりとした証拠はない。より多くの特許を持っているような革新的な会社こそ、より良いという確固たる証拠を見つけるのは、非常に難しい。

イノベーションが正しいかの統計調査

中国の医薬品業界について、今も存在する1300の会社と、その会社のイノベーションに関するデータの統計調査を行った。ここでの、イノベーションとは、ブロックバスター(大ヒットした薬)だけではなく、単純に新しい種類の製品や適応も含まれる。この新しい種類というのは、本当に革新的な薬もあるが、それよりも新しい含有量での服用や、新しい摂取方法(飲み薬ではなく注射で行うなど)、同じ薬の適応拡大(既存の薬が別な病気にも効くなど)といったものも含まれる。つまり、すべてが大々的なイノベーションではないが、それでも十分に「新しい」薬であり、世の中に出回るまでには臨床試験も必要なものだ。

これらのデータから、統計的な手法で調査を行った。イノベーションによって、会社が数年にわたって成長しただろうか?その答えは「No」だ。むしろ、イノベーションによって成長のスピードは遅くなっていた。

「もしかしたら順番が逆で、成長が止まりそうな企業だから、イノベーションをなんとか起こしたのではないか」

そこで、さらに異なる統計手法で、このようなポイントを修正して再度分析してみた。それでも、再び答えは「No」だった。イノベーションを起こす企業は、その他の企業よりも成長で後れをとっていた。イノベーションの直接的な結果として、成長が遅れていたのだ。

「もしかしたら、間違った仮説を持っていたのかもしれない。イノベーションとの関連を調べるには、会社の成長ではなく、会社が長く存続できるかどうかを調べるべきではないか」

そこで再び少し統計手法を変え、会社の存続にどのようにイノベーションが影響するかを調査した。しかし、結果は残念なものだった。イノベーションを起こす会社は、死ぬ可能性(倒産する可能性)も高い。

「なるほど。こんな結果になったのは、イノベーションを起こすにはリスクもあるからだろう。イノベーションは業界の中において、大きな失敗につながることもある。しかし、とても大きな成功を生み出すこともあるじゃないか」

そこで、さらに統計手法を進化させた。イノベーションを起こす会社の平均的な生存率だけではなく、「ばらつき」も調べた。つまり、イノベーションを起こす会社の平均的な存続率以外も調査した。イノベーションを起こす会社には、存続が短い会社もあるかもしれないが、長く存続する会社も結構あるのではないか、と考えた。しかし、再び結果は予想を裏切るものだった。イノベーションを起こす者は、そうでない者よりも失敗する。リスクを取らない者よりもだ。平たく言えば、

「イノベーションを起こす会社は早く死ぬ。ほとんど例外なくだ」

リスクとリターンのトレードオフすらない。統計結果が言っているのは

「イノベーションをめざすべきではない。そうすれば、イノベーションを起こす人よりもリスクを取らずに高いリターンを得られる」

そして、これ以上の調査をするのは止めた。結局のところ、本当に会社はイノベーションを起こすべきではないのだろうか。組織的には、同じことをずっとやり続け、新しいものを始めようとしたりしなければ(そして辛抱強く他人の真似をするチャンスを待てば)、うまく行く可能性も上がる。そして、リスクも少なくなる。

しかし、本当にそうだとしたら、あまり真実を人に言わないほうがよいだろう。イノベーションは確かに大事なものだし、社会的にも必要だ。誰もが会社はイノベーションがないほうがうまくいくと知ったら、誰も新しいことを始めようとしないだろう。

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