裁判所の権力者は誰か?日本の裁判所の問題

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司法官僚―裁判所の権力者たち (岩波新書)

■日本の裁判所の問題

司法の消極性 在日米軍基地訴訟
裁判官の官僚制度 一般人との隔離、給与等を握る事務総局の存在

■第1章 いま、なぜ司法官僚なのか

・司法制度改革の経緯
実務面からの改革
実現は裁判員制度と法科大学院の2つのみ、他はほぼ成果なし又は未着手
司法行政改革は司法制度改革では触れず

・GHQと日本の起草段階時の憲法第6章を巡る話

裁判所法
最高裁判事は15名、下級裁判所は別途法律で定める
最高裁判事の定年70歳、下級65歳(簡裁70歳)
下級は10年毎再任制

・裁判所行政の3つの問題点
①裁判官会議と事務局
実際には最高裁の事務総局が人事を中心とした実権を握る

②判事補制度
エリート司法行政官僚候補生の供給システム
当座であった特例判事補は60年以上も続いている

③予算権の独立
裁判所法83条1項 裁判所の経費は独立して国に計上
財政法 最高裁長官の概算要求権限を積極的に活用してこず

・最高裁事務総局とは何か

■司法官僚はどのように生まれるのか

・最高裁長官
最高裁長官は、訴訟では大法廷の裁判長、小法廷を構成する裁判官、司法行政では最高裁裁判官会議の議長、対外的に司法府の長として、裁判所を代表、実質的な次期最高裁長官の指名権

・歴代最高裁長官の経歴
事務総局の主要局課長→主要高裁長官→最高裁判事

・事務総長は誰がなるのか
事務総局の権限の中心は人事権
事務総局の決定内容は最高裁裁判官会議で拒否等は一度もない

■司法官僚の支配の実態

1.司法官僚機構の影響の及ぶ範囲と対象
裁判所機構の内部を対象とする行政

2.任期10年と最高裁事務総局の人事権
60年代末~裁判官人事を巡る問題
長沼事件(1969)→福島裁判長の青法協所属が判明し、脱退を裁判官全体に強要

裁判官の固定化の問題

人事評価制度開始(1956)
閉鎖的で知られていない
2000年に司法制度改革の折に考査調査表の存在が明らかに

3.裁判官評価の仕組みと実際
裁判官の内閣による任命→指名名簿に基づくが内閣から拒否されたことはない
最高裁裁判官会議が名簿の決定するが、実際はほぼ審議はされず

04年に人事評価制度改革、大きくは変化せず
改革点 評価時の面接の必須、開示及び不服申立制度、裁判所外部からの情報収集

■裁判所をどう変えるのか

1.司法行政改革の核心
90年代後半~の改革議論→司法行政機構・官僚機構自体に焦点が当たらず

裁判官会議
『裁判所法逐条解説』=最高裁の公式見解 と現実の乖離
→各裁判官会議は実質議論もなく案の承認だけの形骸

2.裁判官人事システムの改革
・人事機能
地裁・高裁の唯一残された機能は事務分配
→しかし事務総局等に予め確認

・高裁区域を基本とした裁判官人事
転所・昇進の不明確性
実質的な拒否不能
→高裁区域内での異動ルール策定、希望を聞き、高裁段階で案を作成

・地域裁判官人事諮問委員会の権限強化
再任希望者の調査、弁護士等からの登用の調査、転所の調整

・人事の裁判官会議での議論
評価制度自体は必要、密室は否定

・裁判官の報酬改革

・官僚的な助言・指導脱却

3.裁判所情報公開法の制定と市民参加
・日本の情報開示制度→司法に対する情報開示義務を課した法律なし
・最高裁の定めた司法行政文書開示要綱は法律ではない
→第三者による非開示の妥当性審査がなく、最高裁の判断まで

・裁判所情報公開法制定の必要

4.司法官僚支配を超える
事務総局の再編→人事権分権と情報公開
裁判所行政要職のエリート裁判官あて判化廃止

感想

先の衆院選でも国民審査制度の形骸化などが指摘されたが、一般に裁判官とはどのような人たちなのか、どういう仕組みなのかを知る人はごくわずかである。こういった資料を読むことで、裁判官の制度の概要をつかむことができ、積極的な意見をもつ端緒となりうるだろう。

私見ではあるが、基本的に司法については、刑事は勿論秘匿性を重視されており、また民事でも一般人からすればおよそ身近に接することのない領域であったが、今後はこういった制度をより透明化していく機運が高まっており、その上で一番格式の高い裁判所・裁判官の実態についても知る必要が出てくるだろう。

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