本が取り持つ人と人。「ビブリア古書堂の事件手帖」の書評・感想

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ビブリア古書堂の事件手帖 ~栞子さんと奇妙な客人たち~ (メディアワークス文庫)

 北鎌倉駅のほど近くに、時代がかった古書店がある。ビブリア古書堂という名前の古書店だ。五浦大輔は、祖母の遺品の本を整理していた際に出て来た夏目漱石「漱石全集・新書版」第八巻(岩波書店)を持って、初めてその店に入った。
 応対に出たのは女子高生の篠川文香だ。万事大雑把な彼女は、入院中の姉・篠川栞子が鑑定をしてくれるからと言い、大鮒の病院の場所を教えてくれた。その入院先にいたのは、彼が一度だけ、高校時代に見かけた女性だった。

 幼少期の出来事がきっかけで、読書が好きなのに本を読めなくなった主人公が、書痴と読んでも良い美女と出会う。そしてその彼女は、彼が持ち込んだ本に残されたわずかな手がかりから、五浦家の隠された秘密を暴いていく。
 その結果、古書店で働くことになった大輔は、持ちこまれた古書を入院中の栞子のもとへと運び、古書に込められた物語を解き明かす手伝いをすることになる。

 今回登場する本は、前の本以外に、小山清「落穂拾ひ・聖アンデルセン」(新潮文庫)、ヴィノグラードフ・クジミン「論理学入門」(青木文庫)、太宰治「晩年」(砂小屋書房)。それぞれの本にまつわり、女子高生の想いや、紳士の悩み、蒐書狂の妄執など様々な物語が栞子により解き明かされていく、いわゆる安楽椅子探偵ものだ。
 要素に分解すれば、入院中の美女が謎を解き明かす展開だと上遠野浩平「しずるさんシリーズ」、過去の名作を底本としたミステリだと野村美月「文学少女シリーズ」などが類作として挙げられよう。

感想

 普段は人見知りが激しくてほとんど話さないのに、本のことになると饒舌に語りだす栞子と、本好きなのに本を読めない、本好きを好きになるのに本好きには好かれない宿命を背負った大輔の生み出すもどかしい空気感と、それなのになぜかほとんど初めから大輔に好意を持っているらしい栞子の奇妙なアンバランスが魅力的だ。また、埋もれた名作を世に出す役割も担っていると思う。
 ただ、次巻以降、栞子と大輔の間にあった秘密が消えてしまうので、そのことが今の空気感にどんな影響を及ぼすかは疑問だ。

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