ひとを殺すとはどういうことか 殺人事件のマクロ分析

3152viewsattorney at usattorney at us

このエントリーをはてなブックマークに追加
日本の殺人 (ちくま新書)

■殺人事件の諸相

・殺人の加害者、被害者の関係
親族、知人が9割

・嬰児殺
戦後直後と比して激減
貧困との関連
嬰児殺激減が殺人事件の減少につながる
嬰児殺減少と児童虐待増加との関連
→統計上別物であり、以前は児童虐待は事故扱いされていた?
折檻は当たり前であり、折檻は多かったが、近年のような孤立無縁の状況から殺害にまで至るのは以前はなかったのでは?
しかし、現在も子供の死因は圧倒的に事故が多い

・ケンカ殺人

・保険金殺人
年齢、手段、保険金額など状況は様々で、特に明らかな傾向があるとは言えない
妻側が加害者の場合は愛人が共犯であるケースが多い

・バラバラ殺人事件
遺体の処置に困るか、それとも異常な志向か
前者の場合は、それほど凶悪ではない(非力、頭も良くない)

・大量殺人
一家皆殺(一家心中が多い)、連続殺人、テロ(オウム、連合赤軍、日本赤軍、帝銀事件)
津山三十人殺し(八墓村)
幼児大量死亡(寿産院事件)

・猟奇殺人
統計的な分析ができる程のデータはないが性的な欲求によるものもある
 首なし娘事件、阿部定事件などは愛する相手を殺害し身体の一部を持ち去り一体化をしようとした
 酒鬼薔薇事件→性的サディズム
他、悪魔祓いなどの宗教的な要素等、猟奇殺人者に凶悪性を見出せないものも

捜査等で明らかとされない(犯罪の有無や量刑上、特に事実として指摘しない)ものもあると推測される

・精神異常者の殺人
心身喪失等による刑の免除・減刑→保安処分
犯罪を起こす率は通常人と比べて少しだけ高い
割合が多いのは統合失調症、薬物
未遂が多く、既遂は少ない(錯乱状態で完遂しない)
→通り魔的犯行では防御できずに既遂となるケースがある
繰り返しの犯行、薬物の禁断症状からくる強盗

■捜査~出所

・秋田二児殺害事件の捜査過程を検証

・犯罪報道等
正確ではない捜査や犯罪の情報
→正確な捜査や犯罪手口の情報は逆に捜査を逃れる方法や手口を教えてしまう危険性があり、あえて伏せられてきた伝統と「安全神話」と呼ばれるような、一般人は何も心配せず暮らすというパターンの存在

逮捕~保護観察までの処分は略(著者関連著書に詳しい)

■ひとを殺すとはどういうことか

・被害者は誰か
殺人 遺族も被害者
回復不能

・被害者の正体
加害者は父母や親族、知人も多い
被害者遺族=加害者や、被害者が怨みを買うような人物は多い
メディアによく登場して意見を述べている被害者遺族は、落ち度がない少数のケースだからこそ堂々と出てくるのであり、被害者代表ということは大きな勘違い

・死刑
死刑=法的に殺人ではないが人を殺す点で同じ
死刑のある日本を批判するEU諸国は死刑を廃止しているが、欧米の犯罪を巡る人権侵害状況は日本よりひどく、犯罪者処遇で成功している日本を遅れた国として批判できない

死刑の抑止力=社会的排除、精神的な抑止
→殺人ができる者はこの二つの箍が予め外れている、そういう者には抑止効果はない

・戦争
犯罪や死刑によるよりも戦争による殺しのほうが多いが正当化される
「正しい殺し」は欧米先進国がしてきたものであり、人権概念の発展と同時に、人権の必要性を痛感させる事件を起こしてきた

・殺人の魅力
なぜ小説、ドラマ等で殺人の題材が人気を博しているのか
ある意味人々は殺人好き
獣のような人ということがあるが、むしろ人間こそ同種である人を殺すことをしてきている
単なる怨みではなく、許せない存在を小説等で描いている→共存の難しさ

陪審員について略

感想

世間の耳目を集めるような事件、その背景に対する過熱気味のワイドショーや週刊誌の報道合戦ではなく、一歩引いた目線での捉え方を示したもの。本著者の『安全神話崩壊のパラドックス』では、日本の治安についての一般人の認識やそれを支える社会構造が示されていたが、本書では事件及びそれを起こす環境の分析によって、マスコミ報道の強調する面に対する懐疑的な見方や犯罪背景の客観的分析を示すものとなっている。特に被害者遺族としてマスコミに出てくる人々が、実は被害者としては稀な方々であり、多くの事件では加害者=遺族というケースや、被害者も相当に怨みを買っていることが多いという指摘は特筆すべき点だと思う

関連まとめ

本のまとめカテゴリー


コメントを書く