社長失格その後。社長復活するまでの道のり

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社長復活

社長失格その後

一九九七年一二月二四日のクリスマスイブ、ハイパーネットは東京地裁に破産を宣告された。ハイパーネットはぼくが立ち上げた三つめの会社だった。

インターネット接続料金がまだ月額固定の使い放題ではなく、使った分だけ料金がかかる従量課金制だった時代に、無料で接続できるサービスとして一世を風靡した「ハイパーシステム」。時代の最先端を行くプッシュ型のダイレクト広告システムと連動したこのサービスへの注目度は高く、国内のみならず海外からもオファーが殺到、あのビル・ゲイツからも声がかかるほどだった。

だが、絶頂期は長くは続かなかった。

一九九七年の春から、それまでの上り調子とは一転して、事態は悪いほう、悪いほうへと転がりはじめた。米国ナスダック上場の目論見が外れ、銀行の貸しはがしに遭い、ぼくはカネ集めに奔走した。藁にもすがる思いで何人もの人に支援をお願いしては断られ、わずかに残された希望も打ち砕かれた。最後は、手の打ちようがなくなって万事休す。ぼくは肉体的にも精神的にもボロボロになった。

裁判所から破産の宣告を受けた一九九七年一二月二四日に、ぼくは『日経ビジネス』の「敗軍の将、兵を語る」というコーナーの取材を受けている。ひと通り取材が終わった後、当時の同誌副編集長とのやりとりがあった。

「これから何をするんですか?」と聞かれて、反射的に出てきたのが、

「本でも書こうと思います」というひと言。そんなことはこれっぽっちも考えていなかったのに、女の子とデートしたときに「ますますきれいになったね」と思わず言ってしまうような軽いノリだ。だが、相手は本気にとったのか、「それなら、うちから出しますよ」という答えが返ってきた。

どうせ時間もたっぷりあるし、ということで書いてみることにした。一九九八年正月開けの話だ。一九九八年一一月に発売され、自分で言うのものなんだが、驚異のロングセラーとなる『社長失格』は、こんな軽いノリからはじまった。膨大な時間があった。ぼくに課せられたミッションは原稿を書くことだけ。たいしたお金にはならないかもしれないが、新聞配達よりは効率が良さそうだ。ただ、やる以上は、可能な限り正確に、可能な限りトピックスを拾っていこうと思い、原稿にのめり込んだ。

放っておいても毎週のように講演が入る。一回最低五〇万円の講演を五〇回こなせば、年間二五〇〇万円以上の収入になる。雑誌の取材も月に何本もあって、『社長失格』の印税も入る。もろもろ合わせて、年収は五〇〇〇万円を超えた。人間、倒産してみるのも悪くないなと思ったものだ。もっとも、そんな生活が長く続くことはなかった。

結婚後、数カ月を過ぎた頃から、ぼくはどんどん生気を失って、いつしかつまらない人間に成り果てた。一時期の明石家さんまと同じだ。飛ぶ鳥を落とす勢いだったさんまは、大竹しのぶと結婚したとたん、つまらなくなった。復活したのは離婚してからだ。やっぱり結婚した身だからと、そういうところは妙に真面目なぼくは、浮気もせず、お食事会にも顔を出さず、刺激の少ない日々を送っていた。誰も経験したことのないような山あり谷ありの人生だからこそ、それをおもしろがって聞いてくれる人がいたのに、実生活で堅実な方向に舵を切ったとたん、話がつまらなくなってしまった。得意の下ネタの切れ味も悪くなった。口で稼いでいる人間がつまらなくなったらジリ貧だ。

あれほどあった講演の数が減り、それと前後するように「懲りないくん」の連載も終了した。『社長失格』もさすがに期限切れかな、と思った。そして、今の生活を改めないとどうしようもないと思うようになった。彼女に問題があったわけではない。もはや自分自身がハッピーではなかった。ささいなことがきっかけで彼女とケンカになり、ぼくは「別れたい」と自分の気持ちを伝えた。離婚は言ったもの負けで、別れ話を切り出したほうは慰謝料その他で不利なのだが、そのときのぼくの気持ちは「もうどうでもいいや」。だから、自分から離婚を切り出し、数カ月の別居生活と家庭裁判所による調停の末、二〇〇三年の一二月に正式に離婚した。わずか一年半の結婚生活だった。

例え話に使える

ワインで満たされた樽に小さじ一杯の汚水を入れただけで、そのワインはもはや売り物にならない。ただの汚水の樽になってしまうからだ。その逆に、汚水で満たされた樽にボトル数本のワインを入れても汚水は汚水のままだ。決してワインにはならない。

感想

後半は現在やっているサービスの話ばかりで少し興ざめしましたが、やはりところどころで出てくる言葉が刺さりました。一度会社を失敗しているからこそわかる本質がわかる意味では、とてもいい本です。もっと社長復活までの道のりと社長復活してからの気持ちがあったらすごくいい本だったので、そこがもったいなかったです。

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