食べる女の書評・感想まとめ

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食べる女 -スローフード・スローセックス-

台所の暗がりで

草介が手際よく抜栓してく注いでくれた赤い液体は、キリストの血みたいに多実子の体に染み入った。数日ぶりのアルコールだったからかもしれない。そしてこの一杯の赤い液体が、草介へのお礼についての思考をいきなりフィジカルなものにしてしまった。 どうせお礼をするなら、セックスをしてあげちゃおうかしら。

セックスとラーメンの方向性

「ビール、たのもうかと思うんですけど、よろしかったら一口、いかがですか?」
「え? じゃ・・・一口だけ」
店を出ると、風邪はいっそう冷たくなっている。帰りはどっちの方向ですか? と、男の指がきき、こっちの方向です、と、麻子の指が答えた。こっちの方向に二人で歩き出した。
「どこかで、もう一杯、いかがですか?」

北の恋人(スノーマン)

タクシーの車窓の向うを雪が舞いはじめている。「寒い筈よね」「寒い筈ですよね」。タクシーを降りた私が今夜のお礼を言おうとして振り返ると、シノザキくんも降りて、私の傍らに立っていた。

闖入者

「タナベさん、よろしかったら、お酒でもご一緒しませんか?」私は思わず声をかけてしまった。いつもおいしいものをたべさせてもらってばかりいる後ろめたさと、ずんぐりした背中への哀れみのようなものが、そう言わせたのかもしれない。

賜物(たまもの)

なんだか石のことが気になって仕方なかった。タオルケットを被せてあるのだから見られる心配はないのだけれど、なにしろ相手はヘンな石だからタオルケットを透かして覗き見しているかもしれない。そんなバカバカしい妄想を振り切れないマチ子は、今日四度目の舌打ちをしながら卓袱台の前に坐り直すと、たとえ、石に見られても恥ずかしくないように、箸が摘むものをちゃんと見ながら口に運んだ。

愛のホワイトスープ

アパートに泊まった次の朝、僕にとってなにより幸福な時が訪れる。愛人のために旨いスープを作ってあげるのだ。実は、僕はけっこう料理好きなのだが、妻に遠慮して、マイホームでは手を出したことがない。
でもここは愛人宅だ。思う存分、僕の好きなものが作れる。

幸福な週末

どんな幸せにだって、ほんの少しばかりの寂しさは付きものなんだ。今宵は月に一度だけの幸福な週末だ。

豆腐のごとく

私は両手につつんだ皿の上の豆腐に顔を近付けると、箸も使わず唇を寄せて、静かでやさしい豆腐をそっと口中に招き入れる。

ミンチ・ガール

アタシはどんな素材にも溶け込んで、アタシの旨みをいっぱいあげる。いっぱいあげて包んであげる。やっぱり、アタシはミンチ。お人好しで尻軽で淋しがりやのミンチ・ガール。

桜花美人

「墓石には名前が彫られているだろ? その字は深く彫っちゃいけないんだ。百年経ったら消えていくぐらい、名前なんて石の中に吸い込まれてしまうくらいに浅く彫るー浅墓ってことばはそこからきているんだ」「本当?」真玄はそれには応えずに、墓地の奥を指さした。指差されるままに眼をやった私は、思わず息をのむ。
桜の木があった。満開の桜の木が一本、月光を浴びて佇んでいる。
「女はね、季節に寄り添って暮らしていれば、身ぎれいでいられるんだよ」。どこからか祖母の声が聞こえてきて、私は桜の花びらにそっと手をさしのべる。春の闇はいよいよ深く、なまめいている。

感想

食とエロはつながっている。そんなことを実感させてくれる小説。
食欲も性欲も掻き立てられる素敵な小説、是非!

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