フランス革命前後に活躍したある男の話!静粛に、天才只今勉強中! 1の書評・感想

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静粛に、天才只今勉強中! 1 (希望コミックス)

「誰なのかは秘密」 フランス革命前後に活躍したある男の話

本作は1787年フランスの修道院から始まります。
主人公はコティ。修道院の教師です。

第一話は当時発明されたばかりの気球を試作する話

当時 科学がまだ市民にとっては縁遠い世界で
気球を得体の知れない化け物と誤解して騒動となり
それを見た無名時代のナポレオンが興味を持つという出だしで始まる本作

その後も雷の実験等 中世の科学事情を中心にして
家計が苦しいのに贅沢を繰り返すバツ一の子爵夫人ローズや
フランス市民たちの日常が語られます

まるで「当時のフランスの日常を描いただけの作品」かと錯覚しそうになります
これが本作の特徴にして革新的な部分なのです

先入観を全く持つ事が出来ない歴史漫画

本作の主人公「コティ」の名は本作独自に設定したものです
後の巻で次第にコティが誰であるかは判明しますがこの巻では
「彼が誰であり 歴史上どんな役割を果たすのかは不明のまま」です

これは何故でしょうか?

これは推測ですが 歴史漫画と言うものは
ある程度有名な人間を題材に描かれることが多いです

たとえば小学生が「織田信長」の本を読む場合
その略歴を知っていれば最後はどうなるか分っていて読むこととなります
また略歴を知らなくても 有る程度の前情報を知っていれば
「うつけ」「風雲児」などのフィルターを通してその人物を見ることとなるでしょう

それは先入観に基づいた歴史を再確認する形となります
「信長が実は気弱な人物だった」という設定で作品を書けば
それは一般イメージとのギャップによる笑い話
「本当は優しくていい人」という話なら 一向宗や伊賀の里を虐殺した残酷な
部分との矛盾をどう埋めるのか?という新しい信長像に注意が向いてしまいます

先入観とはレッテル貼りと同じなのです

しかし本作では主人公に関してそういった情報はまだ語られません

それは裏を返せば「全く先入観を持たずに その人物を見ることが出来る」という事

日和見で事なかれ主義のコティがどのような人間になるのか
誰も分かりません。

これから起るであろうフランス革命に関わるのか?
恐怖政治の中で無残に処刑されるのか?
軍人として成功するか、政治家になるのか…

主人公の名を伏せた作品は なだいなだの「TN君の伝記」がありますが
本作はさらに徹底しています

「そもそも本当に存在した人物なのかも 実はこの時点ではわからない」のですから

ショートショートの旗手で 独自の作風を持つ作者によるまっさらな歴史漫画
乾いた画風にとぼけた人物描写
その内には様々な布石を打たれ 緻密に計算された物語が静かに描写されているのです

一風変わったフランス史を読みたい方にお勧めな一品です

この書評は二巻に続きます

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