DVにおけるパワーゲーム

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DV加害男性への心理臨床の試み―脱暴力プログラムの新展開

DVの加害問題を取り上げている。夫婦・恋人は本来対等な関係である。しかし、DVによる暴力は相手の尊厳を破壊する力の行使であり、相手を弱い立場に置くことしか認めない(支配ー被支配)の関係に押し込める。

DVにおけるパワーゲーム

別離を拒むのは虐待的な関係を必要としているからで、家で妻に暴力をふるっているおかげで、社会で活躍し、配慮のある人物として通るための精神的バランスを保っている。妻を徹底して打ちのめすことによって、妻から精神的に支えられている。そのような背景によって、暴力を続ける生き方から逃れられない。それゆえ、専門的プログラムを受けることのない自力のDV克服は、不可能に近い。このように相手から常に優越しようとする傾向をパワーゲームと言う。加害男性にとってパートナーとの関係が「勝つか、負けるか」という価値基準に支配されており、妻の言い分が通るのは、屈服させられるように感じられ、許しがたい思いが生じ、それが暴力に発展する。実際、職場の人間関係では、他人の言い分が通るのを「自分の負け」とは感じないのに、妻に対しては許せないと感じる加害男性は非常に多い。本当は職場を含むあらゆる人間関係において対等さや尊重の体験をしていないのであって、妻以外に対しては「自分の支え手」の期待を放棄しているために、パワーゲームが暴力まで激化せずに済んでいる。妻に対しては選択的に心が開いており、実現不可能なほどの「自分の支え手」の期待を向ける。要するに自分は大事にされることを求めるが、自分が相手を大事にすることは「負けの焔印」と感じられて嫌なのである。加害男性がDV克服を実現するためには、自分だけが尊重されたいと望んでいることの歪みを認め、本当の意味でお互いを尊重する関係を目指そうとする姿勢を持つこと。

ジェンダーの社会問題

多くの女性は制度としての結婚という「親密な」関係に組み込まれる過程で社会進出や経済的自立の機会を奪われていく。女性が暴力から逃れる際に困難として立ち塞がる壁は、男性に経済的に依存しており、経済的な自立が難しいという現実、賃金格差・各種手当などの経済的不均衡は構造的問題。さらに、ジェンダーの女性役割である「思いやり・献身」は、男性が暴力をふるう後押しの役割を果たす。男女の、「親密な」関係は、女性の従属を助長し、強化する社会装置である。

被害者が加害者に転じないための2つの条件

1. 被害者でいた際の苦痛・惨めさ・屈辱の体験を認め、状況の理不尽さや加害者への怒りを正当なものと認める

2. このような被害の際の体験を「どのような人もこのような思いをしてほしくない」という想念に変容させ、それを実現していく意志をもつ

正しい性関係を

性的領域は人間の根幹であり、最も親密な関係でしか開示されず、本当に信頼でつながれば健康な回復努力のリストとなり、反対に空虚で踏みにじられたものと化すセックスは不健康な回復努力である。

コミュニケーションの取り方

家族の願いに耳を傾け、意見を尊重すること。
自分の暴力が妻(恋人)や子どもにどんな影響を与えたかを知ること。

感想

DVにおいて暴力が最大の配慮のなさであると認識した。例えば、妻にとって、妊娠中で体調も気持ちも不安定な時こそ、夫から大切に接してほしいと願うのであり、この時期の暴力は流産の危険もあり、夫が「妻も子どももどうでもいい存在」と宣言するに等しい行為である。女性側からすれば、精一杯のいたわりと優しさを当然に期待している状況での暴力行為は、信頼できる関係を全面否定することであり、通常よりも深くダメージが残ります。暴力そのものが苦痛を与えるのに加えて、妊婦が当然抱くであろう期待が打ち砕かれる苦痛が加算されるなどなど…DVの加害問題を考える上で、必読の一冊です。

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