たくさんの罪の無い人を殺した銭ゲバ!銭ゲバ 下の書評・感想

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銭ゲバ 下 (幻冬舎文庫 し 20-5)

金のために利用できるものは全て利用し、たくさんの罪の無い人を殺した銭ゲバ

綺麗なものに憧れ 卑劣な手で美人の奥さんを手に入れ 子供まで生まれましたが
それさえも殺す外道となります 

銭ゲバ政界へ行く

ついに会社をのっとり大金を手に入れた銭ゲバ
さらに富を手に入れるために市長へ立候補
その後ろ盾として政治家に近づきます

金を手に入れるには権力を手に入れるのが一番です

ここの描写は実に見事で 多くの人間を踏みつけて生きた銭ゲバが
「みんなのお役にたつ為に私は立候補した」という綺麗事を語っている裏で
「銭のためズラ!」と醜い本音を描いたシーンは

「本物の政治家の心理を描いているよう」です

ただし、今回は敵対候補も悪人で
自分の当選のために平気で人を殺し その罪を銭ゲバになすりつけます

しかしそんな危機を相手の腹心を買収することでひっくり返し
真犯人として逆に告発 「銭の力は強力です」

世の政治家はみんなこうでは無いと思いたいのですが
「金と権力のためならこれ位する人間がいてもおかしくない」と
思わせるリアルな展開が実に嫌な感じです

そしてその薄汚い本心までは見抜けない市民は騙され 代議士の肝いりも有り

裏での汚い足の引っ張り合いの末 銭ゲバは当選を果たします

ちなみに このお話の前についているサブタイトルは悪人浄土
浄土=仏教における概念で、清浄で清涼な世界を指す(WIKI「浄土」より)
まさにこの世は悪人にとって清涼な世界であるという皮肉でしょうか?

ついに政治家となった銭ゲバ しかし…

市民を騙しついに権力の座についた銭ゲバ
もはや怖れるものはありません

ところが…

市長として君臨する銭ゲバは ある日「人間の幸福について」というコラムを求められます。
そこで書かれたのは……

平凡なサラリーマンとして 通勤で一緒になった人と たわいも無い話をする朝
事務で豪華でもなんでもないラーメンの出前を幸せそうな顔で頼む昼
夜には美しい妻と子と談笑し ボーナスで車を買う許しをもらって幸せそう

という小市民の生活

「今の彼ならその何千倍も裕福な暮らしができるのにもかかわらず」

休日にはついに手に入れた車でピクニックに出かけます
豪華な食事も 自分に従う子分もいません
憎まれることをしないから敵も存在するはずが無く
愛する家族と幸せそうです

これが銭を信じ 銭だけを求めた人間が「本当に欲しかった」幸せです

誰もがうらやむ財産を手に入れた状態に比べたら本当にささやか過ぎる光景です

でも妻子を自分で殺し 多くの人から憎まれ誰からも愛されない彼にとって

「それは絶対に手に入らないもの」だったのです

金さえあれば という幸せ像は誰もが一度は夢見ますが
その夢から覚めた悪人が見た夢にこそ本当の幸せというのは見えてくるのかもしれません。

本作はこの後衝撃のラストを迎えますが 興味のある方は一度本作を通して読んでみてください

そこでは欲だけに忠実な人生を追体験できます

人間の幸福について あなたも考えてみませんか?

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