想像を超えた神秘と驚愕の世界!マイクロワールド (上)の書評

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マイクロワールド (上) (ハヤカワ・ノヴェルズ)

想像を超えた神秘と驚愕の世界!

4年前に亡くなったマイクル・クライトンの死後に発見された書きかけの小説に、エボラ・ウィルスの恐怖をリアルに描いた「ホット・ゾーン」の著者リチャード・プレストンが手を加えて完成されたものが、この「マイクロワールド」。「ジュラシック・パーク」にみられるように斬新なアイディアに富むマイクル・クライトンの遺作というだけでも、期待に胸高まるのは否めない。

タイトルからみてとれる通り、今回はミクロの世界を舞台とするアドベンチャーものだ。
ミクロの世界をテーマにした小説で、すぐに思い浮かばれるのは「ミクロの決死圏」だが、この小説の舞台は人体ではなく、木々生い茂るハワイのジャングルが舞台。多大な利益獲得をめざす企業の裏の犯罪を偶然知ることになった7人の大学生は、意図的に体をミクロ化され、熱帯雨林の森の中に置き去りにされてしまう。自然界の只中に放り出された人間と、ジャングルの先住民たち(主に昆虫)の戦いがリアルタッチで描かれ、普段はまったく意識していないミクロ世界での生存をかけた激しいサバイバル競争が目の前に展開される。
通常は見えていない世界の何と厳しく、神秘に満ちた世界であるかが、壮絶な圧倒感を持って迫ってくる。ミクロ化された体を元に戻すための期限はわずか数日。はたして、彼らは無事に今まで住んでいた世界に戻ってくることができるのか…

ミクロ世界での精緻な描写に加えて、他のマイクル・クライトンの小説同様、利益を最重視するためには手段を選ばない人間の非情さ、企業のエゴが、彼らを命の危機に陥れる。
人間の最大の敵は、強力な毒を持つ虫や強靭な視力を持つ鳥ではなく、人間なのだということを、筆者はこの小説を通して言いたかったのだろうか。それとも人間ほど不可思議な生き物はいないということを伝えたかったのだろうか。

ミクロの世界を描いてはいるが、複雑な人間世界、様々な人間模様を描いた小説だと言える。個人的にはもう少し、登場人物の心の機微を描いてほしかった気もするが、それは欲張った注文かもしれない。いずれにしても、最後まで飽きさせることなく一気に読ませてくれる極上のエンターティンメントだ。
この小説、エンディングは実に意味深な終わり方で幕を閉じている。それが何であるかは読んでからのお楽しみ、としておきたい。

秋の夜長に、新たなアドベンチャーを求める読者にはぜひお薦めしたい1冊だ。1ページめくるごとに、マイクロワールドに引き込まれていく自分を間違いなく発見することだろう。そして、「ジュラシック・パーク」のように映画化される日も近いうちに訪れるかもしれない、そんな期待を抱かせる1冊である。

マイクロワールド (上) (ハヤカワ・ノヴェルズ)

マイクロワールド (上) (ハヤカワ・ノヴェルズ)

  • マイクルクライトン,リチャードプレストン

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