裏の空手バカ一代!カラテ地獄変 牙 1の書評・感想

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カラテ地獄変 牙 1 (別冊エースファイブコミックス)

盟友関係崩壊後に書かれた 裏の空手バカ一代

マガジンで連載された「空手バカ一代」(以下 空バカ)はモデルの大山倍達の名を広め
極真空手を一躍有名にしました

原作者である梶原一騎自信も腕に覚えがあり、極真空手の段持ちで大山館長とは義兄弟のような仲だったそうです

それだけ親密な関係であり、大山の「友人の借金のために道場を手放した」という話に感激した梶原は

「この素晴らしい空手家を世に送り出したい」という気持ちから空バカを執筆 

その願いは達成されます

ところが社会的地位が上がり組織が大きくなるにつれ 二人の関係は次第に悪化

ついには絶縁状を叩きつけるような関係になります 

 ど う し て こ う な っ た …

本作はこのような状態で書かれた作品です

人間の性 悪なり! 空バカでは描けない悪のバイブル

本作はボディーガード牙という作品の続編 

主人公「牙」の狂犬のように暴れ 力を信望していた前半人生を描いた作品です
 

が、使われるエピソードは空手バカと重複が多く 弟子サイドから見た空バカと言った感じです

梶原先生は自分の周りの出来事をどうしも作品に反映させるお方だったようで
アントニオ猪木と仲が悪かった時は「彼をモデルとした悪役が弟子に殺される」なんて話も書いています

だから本作では大山館長は大東徹源という名前で
 魔王のように強いが冷酷非情 兎どころか蟻にすら全力で勝とうとする
抜け目無い男となっています

例えば弟子との稽古中 簡単に倒された弟子が「まいった」と宣告

そこをさらに ダメ押しで一撃加える徹源

「まいったといった後も油断するな」と厳しくも正しい実践知識を体で覚えさせます

あの優しさと慈愛に満ちた先生の変貌に空バカ読者は度肝を抜かれる事は間違いありません

嫌い でも尊敬している

こうした鬼のような勝利への欲望と鬼のような強さを持った徹源に
力の信望者 牙は反発しますが、とある事件で命を救われ弟子入り

 先ほどのレッスンを実体験します

この時 牙はこうつぶやきます
「全然 てんで人間ってものを信用してねぇ 信用もさせねえケンカ空手」 
「強いにゃ おっそろしく強いがよ… 」

大山は嫌いだけど強い 嫌いだけど強い事は否定しない その強さに憧れる

根がどうしようもなく真っ正直でありながら屈折した心を持つ作者の気持ちを代弁した言葉がここに集約されています

そして牙は彼を師匠と仰ぎ 空手の腕を磨き 

師匠の道場繁栄の道具としてとことんこき使われます

尊敬していながらも恨みに思った部分はきっちりと書いてしまう
その正直さに作品とは別の部分で感動します

そんな待遇に反発しながらも、自分の危機にはしっかり助けに来てくれる師匠を見て
「やっぱり師匠はスゴイや」的な終わりを迎える本作

まるで暴力を振るわれながらも 男から離れる事ができない女性のような
愛憎入り混じった原作者の血文字でできたラブレターのような作品となっています

梶原一騎伝という書評と共に読めばさらに面白くなる事間違いなしな逸品です

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