バナナを通じて世界史を読み解く。バナナの世界史の書評・感想

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バナナの世界史――歴史を変えた果物の数奇な運命 (ヒストリカル・スタディーズ)

 スーパーや八百屋に行くと当たり前のように打っている熱帯の果物。皮が黄色いのに実は白く、種がなくて簡単に食べられる。日常の風景の一つになっているそれは、バナナだ。しかしこのバナナ、キャベンディッシュという品種が市場の過半を占めているらしい。その前には、グロスミッチェルという品種が大部分を占めていたという。
 そしてこの品種の移り変わりは、新しい方が美味しいから起こったわけではない。そこに、バナナが直面している危機の秘密がある。

 バナナと人類の関わりは、旧約聖書の時代に遡る。アダムとイブがサタンの誘惑により食べたと言う知恵の実は、りんごと言うのが定説だと思う。しかしここには同音異義語のトリックがあり、グーテンベルグ聖書で翻訳されたときに誤訳が起きた可能性もあるという。そして実は、知恵の実とはバナナだった可能性もあるのだ。
 もしそうだったとしたら、イブがアダムにバナナを差し出している図は、中々にエロスがあると言えるだろう。

 そしてそのバナナは、海を渡り、中南米で大規模に栽培されることとなった。その栽培を牛耳ったのが、アメリカのユナイテッド・フルーツ社だ。その寡占ぶりは凄まじく、また、その地位を維持するためにあらゆる努力を惜しまなかったため、アメリカ政府へのロビー活動の結果、中南米諸国に虐殺や政変の嵐を呼ぶこととなった。実は白いけれど、実は赤く血塗られた果物でもあるらしい。
 その様子は、ガルシア・マルケス「百年の孤独」などにも描かれているそうだ。

 そしてバナナの特徴である不念、つまり種がないことは、その品種改良を極端に難しくしている。それ故に、寡種のバナナが市場を席巻することになった。そして、多様性を無くした生物が直面するのは、環境の変化による絶滅である。
 パナマ病と言う病気は、世界の一点から始まり、世界中のグロスミッチェル種を絶滅寸前に追い込んだ。危うく、食卓からバナナが消えるところだったのだ。それを救ったのがキャベンディッシュ種なのだが、実はこれも今、グロスミッチェル種と同様の危機に直面しているという。

感想

 バナナはデザートと言うばかりではない。いまやじゃがいもよりも飢える人々を救う主食でもある。もしそんなバナナが病気で立ち枯れることになれば、食糧危機の問題は今よりも深刻になってしまうかもしれない。
 そんなこれまで知らなかった視点から、世界と食卓を結ぶ思考が生まれる。そのきっかけになる本だとは思う。しかし、翻訳本にありがちだが、若干読みづらいところも見受けられる。

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