読後に奈良に行きたくなる小説「鹿男あをによし」の書評・感想

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鹿男あをによし (幻冬舎文庫)

「さぁ、神無月だ。出番だよ、先生」読後に奈良に行きたくなる小説。行く前にドラマを観てから行きたくなる小説。鹿男を読んで観て、奈良に行こう。

■台詞メモ(ネタバレ注意)

さあ、神無月だ。出番だよ、先生。

神無月だからですよ。どの神様も出雲に集合をかけられて、出払っているんです。
そうか、だから神無月って言うんだよね。そりゃマズイね。大ナマズが暴れてしまうじゃない
大丈夫です。恵比寿がいますから

僕は女の人は誰でもきれいだと思うよ。でも、マドンナはずいぶん素敵だね。

その昔、狐は人に化けるとき、相手の眉毛の本数を数えたそうだ、眉に唾をつけて寝かせておけば本数を数えられず、狐に化かされずにすむ。

■児玉清さんあとがきメモ

奈良という日本のすべての原点ともいえる古の都を舞台に繰り広げられる物語は読者の想像をはるかに超えた時空で展開する。

悠久の時が刻まれたこの地では何が起きても決して不思議でも突飛でもない。
歴史を踏み分け、重層の夜を切り裂き、幽玄のはざまに紡ぎ出された青春物語は知的で奇想天外。
愉快で可笑しくて、滅茶面白く、謎の深さにも心を奪われるエンターテインメント性にも優れているばかりか、爽やかで、ほろ苦くて、甘く切ないロマンでもある。
読み終えた時、僕は清々しい気持で空を眺めたものだ。
心を切なくも揺するノスタルジックな青春への限りなき憧れとともに…

よく考えれば荒唐無稽な非現実的物語なのに、これほど物語の面白さにひかれるのはいったいなんなのか。
実はそこには、真にまっとうに生きる愛すべき主人公たちが、しっかりと現実の大地に足を着けて生きているからにほかならない。
物語の主人公たちや登場人物たちの魅力にひかれ、すっかり感情移入してしまった僕は、物語の世界に没入し、溶け込み、一気に超常現象の世界を共に熱く走り抜け、凄まじいばかりのシンパシーに心を震わせたのだった。

ふと、心の中に立ち上ってくるのは、あの夏目漱石の名作「坊ちゃん」だ。つまりは実に愛すべき若者の姿だ。そう、万城目小説の主人公たちは、皆、心根が正しく、まっとうで爽やかなのだ。だから嬉しい。

そして、この雌鹿の言葉から物語は一挙に核心に向かって加速し、それからは万城目ワールド全開となる。
次から次へと謎が生まれ、謎が一つ解けたかと思うとまた新たなる疑問が湧いてくる。
予断を許さぬ破天荒なプロット運びこそ万城目小説の真骨頂だが、念には念を入れて構築されたプロットは読む者の鼻面を引き回すかのように、ことごとく予測をくつがえす。

パズルの一つ一つが埋められていく過程は万城目小説ならではの愉悦をもたらす醍醐味と言えよう。
作者の想像力は卓越した博覧強記と手をつなぎ、古の時代から現代までの森羅万象をひもときながら読者を想像を絶するまさに奇想天外な世界へと導く。

感想

奈良・京都・大阪で鹿・狐・鼠がそれぞれ守っているという設定は中二心をくすぐります。
修学旅行以外では奈良になんて行く気にならない自分だが、本書の世界に魅入られてからは足を運びたくてたまらなくなった。

冒頭に記載した鹿のセリフ、これが自分の心を掴んで話さないのはなぜだろう。
「さあ、~出番だよ」という言いまわしが、これから始まることへのよい景気付けになっているからだろうか。「先生の出番だ」ではなく、「出番だよ、先生」と、職業で読んでいるのと、体言止めになっているのが耳に心地よい。

文庫版なので、末尾の児玉清さんの解説もよいです。
読書が好きで万城目作品を心から楽しんでいるのが伝わってきて和やかになってしまいます。

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