なぜドイツは、脱原発と経済成長を両立できるのか

3059views折笠 隆折笠 隆

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脱原発を決めたドイツの挑戦  角川SSC新書  再生可能エネルギー大国への道

ドイツのエネルギー革命が注目されている。先進工業国が、原子力や化石燃料依存からの脱却をめざすという、類を見ない試みだからだ。同国の電力政策を分析し、日本との違いを探る。

なぜドイツは原発を捨てたのか

  • 昨年ドイツは、2022年に原発を完全廃止することを決めた。原発事故わずか4か月後という速やかな決断の背景には、数十年にわたる論争や、その中で生まれてきた環境政党・緑の党の存在がある。安全志向で、環境問題に関心が強い国民性の影響もあるだろう。

日本と大きく異なるドイツの電力市場

  • ドイツは電力自由化により、売電会社が1000社を超えた。消費者はネットの価格比較サイトを見ながら、好きな電力会社を選んだり簡単に変更したりできる。ドイツ人はエコ電力に関心が高く、再生可能エネルギー専門の売電会社は人気だ。

  • 90年代までは、ドイツも大手電力会社の寡占状態だった。が、EUの指令で98年に電力自由化が開始。その後も欧州委員会の厳しい指導を受けることで、新規参入・競争が進む。

  • 実は、個人世帯向け電力料金は2000年に比べ70%も高騰。自然エネルギー普及のための助成金などが上乗せされているためだ。企業からも産業空洞化を懸念する声があがり、政府は企業の負担金軽減など対策を講じている。

エネルギー革命の全貌

  • ドイツの目標は、2050年までに再生可能エネルギー比率を80%に高めること。海外からは懐疑的な評価もあるが、ドイツは本気。この11年間でエコ電力比率を6.6%から19.9%へ増やした実績があるからだ。政府は風力発電の拡充をエネルギー革命の柱に据える。

  • エコ電力浸透の背景には、年間1兆3500億円(2011年)に及ぶ助成金の存在が大きい。また、再生可能エネルギーの買取義務を世界で初めて法制化したのがドイツ。買取価格を20年間固定(=安定)させることで、投資家の新規参入を促した。

課題もある。
1…助成金に頼らずに普及できるか/ボーナス制導入で、自由市場での電力販売を促す
2…送電網整備の遅れ/北部の洋上発電基地と、工業が盛んな南部が離れすぎ
3…予備電源の確保/自然エネルギーは供給が不安定。スマートグリッドへの期待も

脱原発・脱化石燃料のためにはコスト高騰も厭わない。こんな国民的な覚悟の背景にあるのは、経済的理由ではなく純粋な使命感。ドイツのGDPはここ11年で36%増えたが、1次エネルギー消費量は10%減った。エネルギー革命と経済成長の両立。課題はあるが注目したい。

ヨーロッパ電力市場の行方

  • EUは2014年までに、域内の単一電力市場実現を目指す。ヨーロッパ内での国際的な電力取引は今後さらに活発になるだろう。また、2050年までに欧州電力需要の15%をサハラ砂漠の太陽光発電でまかなう、という壮大なプロジェクトも進行中。

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