人の購入行動を心理面から分析し、売上げにつなげるマーケティング方法

10099views折笠 隆折笠 隆

このエントリーをはてなブックマークに追加
「買いたい!」のスイッチを押す方法  消費者の心と行動を読み解く (角川oneテーマ21)

概要

人の購入行動を心理面から分析し、売上げにつなげる方法を提案する。

脳は不況を知らない

商品が売れないのは不況のせいではない。例えば、私が持っているスター・ウォーズのライトセーバー(10万円以上)。さて、あなたは買いたい? NOと答えた人に質問。それは不況だからか?景気回復したら買うか?

そう、購入意思と不況は関係ない。人が物を買うまでのハードルを改めて認識しよう。一つは「買いたいか、買いたくないか」。もう一つは主に価格などの「リスク」。不況は後者のハードルを高くしているにすぎない。

まず一つ目のハードルを越えよう。必要なのは買う動機を作り出すこと。脳の情動に訴える情報を提示し、報酬系と呼ばれる神経伝達物質・ドーパミンの分泌を促して消費行動に結び付ける。

例えばエモーション・ド・テロワールというワイン。商品名だけでは誰も買わないが、「天才醸造家がフランス政府に逆らってまで作ったワイン」と紹介すると、購入希望者が急増した。情動に訴える情報は購買欲をそそる。

脳はこうして買い物をする

購買動機を喚起するのは、五感で取り入れる感性情報。店頭の説明で、デザインで、他人が使っているのを見て…。感性に訴えることで購入意欲が生まれる。安いから買うわけでは決してない。

人は動機づけられて購入を意思決定する。性別や住む場所などに関わらず普遍的な本質。

消費嗜好の多様化が売れない原因との意見もよく聞く。だが、より強い動機づけさえすれば恐れることはない。ドーパミンは新しい刺激に反応して分泌される。人は「新鮮な驚き」を購入したがっているのだ。

モノを買わない脳、「私」を買う脳

消費行動はhavingからbeingへ移行している。前者は単なる所有だが、後者は「好ましい自分にどうすればなれるか」という問いだ。

未来の自分を楽しくさせる何かを見た瞬間、人はワクワク(フルフィルメント)する。売り手は、先の問いに対する答えを提示してあげよう。

いまや消費者に“欲しいもの”はない。消費者は「未来の私」を買うのだ。

顧客のbeingの探究を手伝ってあげるのが、これからのビジネスである。自社の商品を顧客の未来に埋め込み、そのシナリオを示してあげる。言い換えれば、顧客の未来の消費行動を計画することが大事なのだ。

購買行動を創り出すマーケティング

物を買うというのは“行動”だ。そこでキーアクションを整理する。

1 購入行動デザイン/商品を買う際の行動を、分解して可視化する。例えば入店→商品に気付く→欲しくなる→説明を聞く→検討→決定→支払い、のように。買わないとき、人はどの段階で止まるのか。

2 キー・ビヘイビアの発見/意図的に動機付けが必要な行動を見つけ出す。例えば、売りたい料理を客が必ず注文するとは限らない。メニューに載せるだけでは気付いてくれないかも。これが“動機付けが必要な行動”だ。

3 感性情報デザイン/キー・ビヘイビアを見つけたら、その行動を感性に訴えて動機付けする。20万円以上のイスを「夫婦円満ソファ」と感性に訴え、売り上げを伸ばした例もある。

売上げを伸ばした例を。

■人間工学を駆使した高価なイス。機能説明や割引はせず「もう、読書するならこのイス!」と至福の時間が過ごせることを訴求して来客増。さらに購入者の「人生観が変わった」「帰省した娘が座り心地の良さに帰らない」という体験を告知して売上げを伸ばす。

■地方のスーパーがプリンの売上を50倍に。美味しさの訴求に加え「TVチャンピオンのプリン王が、食品会社入社後やっと手がけたプリン」と打ちだして売上げ増。さらに噂が広まり、小さな町のいわば“事件”に。参加しようとさらに客が殺到した。ワクワク感を買いに来たわけだ。

顧客の感性を育成する

売上げを伸ばしたある呉服店は、ある女性が高い着物を欲しがっても、不要と判断すれば「あなたには早い」と売らない。それが長い目で見れば良質の顧客になる。売り手側が顧客の欲望を教育するのだ。

脳の二つの回路を磨く

数字ばかりを見るな。売上げを生むのは顧客の「行動」なのだ。自社の商品を客はどんなふうに買っているのか、スラスラ説明できるようにならないとダメ。その上で「直観回路」「共感回路」の2つを磨いていく必要がある。

直観回路は、膨大な選択肢の中から最善の一手を選ぶ能力だ。過去の事例を多数集め、実体験を蓄積。さらに異業種との交流でスキルを深めていこう。

共感回路は、顧客のコンテクストを共有し共通感覚を醸成する力。先述の呉服店は顧客に商品を薦めない。客の人生観を聞けば、必要な商品が自然に分かるという。とにかく顧客と多く対面して、共感の感覚を磨いていこう。

関連まとめ

本のまとめカテゴリー


コメントを書く