公的年金、医療・介護保険がわかる本。「だまされないための年金・医療・介護入門」の書評

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だまされないための年金・医療・介護入門―社会保障改革の正しい見方・考え方

給付減・負担増が繰り返される公的年金、医療・介護保険について、なぜそうなるか分かりやすく解説。政府や政治家が現実味のない前提や統計を駆使し、将来に負担を先送りする制度設計を繰り返す構造がわかる。

第1章 社会保障制度の「危機」はなぜ起きるのか

財政悪化の根源である少子高齢化の影響を、高齢者/現役比率のグラフを示し解説。胴上げ(1950)から騎馬戦(2008)、肩車社会(2040)へ向かう今後60年の苦境は、少子化対策や給付カットでは解決できない。
公的年金、医療・介護保険の財政方式は、その時の現役が高齢者を支える賦課方式のため、3つの負担は現役世代にかかり、1970年以降の世代は生まれが遅いほど損。1940年生まれは+4850万円だが2005年生まれは-3490万。
厚労省は10年先までの予測しか公開しないが、筆者は2100年まで試算し、国民所得の40%弱が公的年金、医療・介護の給付費になることを示す。
政治家や厚労省が駆使する反論(詭弁)5種類に対する反駁も参考になる。対策としては賦課方式から積立方式への移行を主張。

第2章 本当に必要なことを最小限にまとめた社会保障入門

社会保障論の教科書では、現行制度ありきで後付けの理屈で仕組みを解説しているため、あるべき姿が理解できないが、本章では保険の原則(リスクの理論)から説明しており理解しやすい。
社会保障制度は本来保険であり、現行制度の世代間所得分配・税金投入・世代内所得再分配・応能負担とは理論的には相容れないことや、賦課方式が合理的なケースは理論上限定される(人口増、特定世代の全員が損害を被るなど)ことが説明されている。
現行制度については、後付けの無理な理論ではなく、歴史的経緯のみで説明しているため、スッキリ理解できる。
①最初は豊かなサラリーマン(大企業と公務員)の制度のみ、②次に中小企業の制度ができたが財政不足で公費負担、③公費を大々的に負担しサラリーマン以外も加入させて皆保険成立、④高度成長が終わり公費に余裕がなくなったため職域制度間で財政調整、⑤大企業と公務員の不満を抑えるため財政調整に公費負担を組み込み、⑥公費負担を抑えるため給付価格統制(診療報酬、薬価基準、介護報酬等)や参入規制(病床規制、介護施設総量規制等)の仕組み導入
以降、医療、年金、介護について、制度全体の構成、公費負担率(税負担)の違い、自己負担率の違い、財政調整、保険料の徴収方法の特徴などを図入りで解説。コラムでは、厚労省の長瀬式、OSU年金財政モデルなどを紹介。

第3章 年金改革の現状と論点

被用者年金一元化、消費目的税化、基礎年金資格期間短縮、パートの厚生年金加入などについて。

第4章 医療保険・介護保険改革の現状と論点

生活習慣病対策、予防医療、価格規制、高額診療報酬の財政調整、勤務医不足、新医師臨床研修制度、混合介護、介護労働力不足対策などについて。

第5章 最初で最後の社会保障抜本改革

積立方式への全面移行、基礎年金財源の税方式化について、シミュレーションを交えた筆者主張。クローバック、MSAなど外国制度も紹介。

感想

社会保障論の教科書に書かれた中途半端な制度理論(?)や、社会保険労務士のテキストを読んでも全く納得できなかった現行制度の構成や考え方について、歴史的経緯と財政の2面に整理して合理的に解説しているため、よく理解でき参考になった。

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