タックスヘイブンとは何か。何に使われているのか。世界経済にどんな悪影響を及ぼしているか。

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タックスヘイブンの闇 世界の富は盗まれている!

定義:タックスヘイブンとは何か

1. 超低税率 :税金が全くかからないか、非常に少ない
2. 高い守秘性:外部からの情報公開にほとんど応じない

の両方を満たす地域である。

後述する理由により、
・世界の貿易取引の半分以上
・全ての銀行資産の半分以上
・多国籍企業の海外直接投資の1/3
がタックスヘイブンを経由している。

場所:金融センターロンドンを支えるタックスヘイブン

スイスやケイマン諸島が有名だが、最も巨大なのは旧イギリス帝国領のタックスヘイブンネットワーク(シンガポール、香港、ジャージーなど。ケイマン諸島もこの一部)

ここに渡ったマネーは、世界的金融センターでありグループの中心であるロンドンに集まる。ロンドンというクモが張った「クモの巣」である

活用:大富豪曰く「税金は庶民が払うもの」である

タックスヘイブンの主な活用のされ方は以下の2つ。

■金融機関による、多国籍企業や資産家の合法的税金逃れ
 多国籍企業はグループ内取引によって、タックスヘイブンに利益を集め、非タックスヘイブンにコストを集めることで、多額の税金逃れが可能。この利益移動を価格移転操作と言う。このスキームは多国籍企業や資産家を顧客とする金融機関主導で展開される。
 ニューヨーク在住のホテル王レオナ・ヘルムズリーは「税金は庶民が払うもの」と言い放った。

■犯罪マネーや汚職マネーのロンダリング
 タックスヘイブンに一度資金を経由させれば、その守秘性によりその金のルートを辿ることは非常に難しくなる。つまり一度経由すれば汚い金が容易にキレイな金になる

実態:タックスヘイブンの現地政府は金融機関に乗っ取られている

・大方のタックスヘイブンには産業が金融しかない
・つまり現地政府は金融を発展させるしかない。金融機関と政府の利益の方向性が一緒
・よって現地政府は金融機関の実質的な言いなり
・結果として過剰に金融機関に有利な法改正や規制緩和が実現している

影響:タックスヘイブンは、途上国から経済援助額の10倍の金を巻き上げている

1.発展途上国の経済的自立の妨げ
 ・タックスヘイブンへの発展途上国からの資本流出は年間1兆ドル
 ・一方でODAなどの途上国への援助は年間1,000億ドル。流出の1/10
 ・結果として最も安定的な歳入である課税の機会を大量に逃している
 ・これによる資本流出と課税基盤の弱体化がなければ自立可能な途上国は多い

2.貧乏人が資本家(企業&個人)の税金を肩代わりする構造
 ・金融機関を通じてタックスヘイブンを利用できるのは資本家だけ
 ・資本家が税金を払わないので富の再分配が成されず、格差が定着

3.金融の根本である「信頼」を破壊する
 ・タックスヘイブンの守秘性により粉飾などが容易く行える
 ・さらに財務情報が世界に分散するので外部からは網羅的な把握が不可能

感想

資本家や政治エリート達が、一般人に義務を強いながら、どれだけ自分達が義務から逃れようとしているかが良くわかる一冊で、あなたも読後に憤りを感じるはず。

著者の『タックスヘイブンこそが世界の貧困・不平等・格差を助長する大きな原因である
』という主張は非常に鋭く説得力がある。

また、まとめには書けなかったが、主なタックスヘイブンの政府幹部や反タックスヘイブン勢力へのインタビューとその分析こそが本書の最も面白い部分で、それは非常に生々しく、刺激的だ。


オリンパスの巨額粉飾の件でもケイマン諸島が誌面を賑わし、少しずつ認知を得てきたものの、アングラっぽい印象と共に、それが世界経済・世界金融においてどのような機能を持っているのかはほとんど知られていなかった「タックスヘイブン」

そこを徹底的な取材を基に解き明かそうとした本書は、良書だと思う。

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