新しい国づくりを池上彰氏が提言「先送りできない日本 ”第二の焼け跡”からの再出発」

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先送りできない日本  ”第二の焼け跡”からの再出発 (角川oneテーマ21)

概要

日本の行き詰まりは、諸問題を先送りしてきたことにある。震災を機に、新しい国づくりを池上彰氏が提言。

ドアを開ければグローバル社会

■関税ルールを決めるWTOで中国・インドなど新興国の発言力が増し、日本に市場開放を求める外圧が強まっている。また人件費だけでなく技術力でも中韓が猛追。日本の相対的地位は低下傾向にある。

■二国間の貿易協定であるEPAやFTAが重要。早くからグローバル化に照準を絞った韓国は欧米と協定を結び、今後は関税なしで貿易を行う。出遅れた日本は価格競争で苦境必至。放っておくと経産省試算ではGDP10兆円減。

■TPPはEPAに類似した、環太平洋諸国の域内取引。10年に米が交渉に参入したことで、消極的だった日本も交渉を始めた。目的は主に経済活性化や米との貿易確保。ただし、米は強引な要求を日本にする可能性がある。といって参加しなければ、日本抜きでアジア太平洋の経済が動いていく懸念も。

TPPでどうなる、日本の農業

■なぜ農業だけ保護されるのか。自国の食糧供給安定は大切だが、過保護は産業を衰退させる。米の鉄鋼や自動車が好例だ。日本の農業は行政指導による平等主義で若手が育たない。今後は農業も健全な競争社会を受け入れよ。

■日本の農業は国策に翻弄され、自立できずに衰退した。農家の高齢化が進み、現状では消滅を待つのみ。TPPをきっかけに、自立意欲のある強い農家が国際競争力をつけ、新しい農業のあり方を開拓していくしかない。方針転換は農業団体の猛反発を食うだろうが、政治家は断行するべきだ。

国が変わるということ

■韓国が国策の大転換に成功した理由は、97~98年のIMF危機。破綻寸前の経験から、グローバリズムと貿易重視に対する国民のコンセンサスが生まれた。また国内市場が小さく、貿易立国を目指す覚悟が必要だった。

■日本の金融業界も、金融ビッグバンによる合併の繰り返しを経て体力をつけてきたのだ。一方、中小企業は苦境に立つが、格差に対する政治的介入(援助)には賛成できない。スタートが平等であれば、格差は社会福祉政策で救済すべき。経済政策で救うのは間違っている。

■TPPについて。農水省(TPP参加でマイナス8.4兆)と経産省(TPP不参加でマイナス10兆)の試算を比較すると、TPP加盟が有利と判断できる。

世界が知恵を絞る巨龍との付き合い方

■中国は一党独裁など不安定要素があり、外交相手としては常にリスクを伴う存在(=チャイナ・リスク)。しかし、世界は中国に頼らざるを得ない。

■欧米や豪州から見た日本の存在は大きい。地政学的に見て対中国・対ロシアの入口に位置するからだ。またASEAN諸国やインドも、中国に取り込まれまいと日本に期待する。この状況を利用し日本は外交を優位に進めよ。

■中国を嫌うばかりではだめ。中国人がモラルを信じないのは過去幾多の圧政の経験から。問題は民族性より、それを生んだ国家のシステムにある。また中国は大国としての振舞いを知らない。勢いがある半面不安も抱える。

ものづくり大国日本、新ステージへ

■ガラパゴス化の原因は、世界標準に対しハイスペック過ぎただけではない。付加価値の付け方がまずいのではないか。例えば躍進する韓国のサムスン。サリーが洗える洗濯機やコーランが表示できるテレビなど、各国の実情に応じたマーケティングが実にうまい。

■韓国と違い、国内市場がそこそこ大きかった日本は世界市場への対応が遅れた。中韓への技術供与も慎重に判断しないとすぐ追いつかれてしまう。国が技術セールスについてもっと協力し、世界に売り込んでいく必要がある。

■BRICsで白物家電が爆発的に売れている。今後も下層階級の中流化に伴う市場は拡大するので対応を急ぎたい。一方で、上流階級にはこれまで築いてきたジャパン・ブランドを打ち出し市場を堅守していく。

明日を決めるのはあなた

■いまや国の借金は900兆円。そこに震災がきて、諸問題を先送りできなくなった。なぜ今までなんとなくやってこれたかと言うと、国債の95%を国内投資家が保有しているため。対外債務が少ないのが幸いした。

■先送りされている消費税だが、民意はやむなしと認めていると言える。あとは政治が実現へどう引っ張っていくかだけ。そもそも現行の年金制度は、消費税10%を前提としている。苦境は予想されるが、急がないと。

■先送りをなくすには若いリーダーの出現が必要。高齢政治家だと“逃げ切れる”ため保守的な判断をしがちだ。また、ダメな政治家を選んだのは国民だが、そのきっかけとなるメディアにも責任がある。国民への判断材料を適切に提示せよ。先送り政治を醸成してきた罪は重い。

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