天才になる条件。天才とは持って生まれた才能ではなく、環境や育った文化や巡り合わせの機会で生まれる!

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天才!  成功する人々の法則

本書の概要

天才とは持って生まれた才能ではなく、環境や育った文化や巡り合わせの機会による産物である。また一流の成功者が才能を発揮するために濃密な時間を鍛練に費やしたという「一万時間の法則」を主張した著書である。

本書の構成

 本書は前半部(一部)と後半部(二部)から構成され、前半も後半も主張は一貫している。すなわち、才能や成功とは持って生まれた物以上に、環境的な優位性によって成立しているという主張である。かかる主張を前半では「時間的な積み重ねの優位」という観点から分析的に論じ、後半では「文化的な遺産」による環境要因に探っている。
 はっきり言って前半は非常に明快かつ分析も鋭く、楽しく読める。しかし後半は分析よりは事例の記述内容が多く、私自身は結論ありきの内容に感じた。それゆえ、この書評ではとくに価値があると感じた前半部分に照準してご紹介したい。

時間的な積み重ねの優位とは

 不思議なことにこの本はカナダのアイスホッケーの話から始まる。何のことかと読み進めると、アイスホッケーの代表選手には共通項があるという。それは1-3月生まれの者の割合が多いということだ。カナダのアイスホッケーでは1月から1学年が区切られる。著者はアイスホッケーのスター選手は才能のある者ではなく、ただ早く生まれたために「才能がある」と見なされ、選抜され、特別に訓練されることで、いつのまにか本当に他とは異なる上手さにまで「上達した」者にすぎないと喝破するのである。こういう数字を交えた説得的なエピソードで前半は進んでいく。

子供の頃からの天才もいるのでは?

 しかし、天才のエピソードには子供時代から別格であったという話がつきものだ。その最たる人物は例えば6歳で作曲をしたと言われるモーツァルトである。しかしこの疑念をあらかじめ予測していたように、著者はモーツァルトでさえも子供の頃の曲は大したものではなく代表的な傑作は「21歳」のものであるから、作曲を始めた14年後の「遅咲き」だと言う。つまり「早熟の天才」という見方を180°転換してしまう。

一万時間の法則

 本書の最も魅力的な主張は「一万時間の法則」である。ビルゲイツやビートルズまたプロの演奏家などの幾人かの生い立ちを探り、彼らの伝記などで言われるような才能の部分ではなく、どれほど各専門分野の鍛練に時間を投じてきたのかを探り、それがおよそ「一万時間」であると言う。つまりは才能ではなく濃密な「一万時間」を費やせたからこそ一流になりえたのである。

背理法的証明

 しかし「一万時間の法則」は本当に妥当か。例えばIQなどでも確実に差があるではないか。こういう疑念にこたえるべく、著者は子供時代にIQが高かった者達を追跡調査した心理学者ターマンの『天才たちの遺伝学的研究』を引きあいに出し、説得的に反証している。

感想

 本書は全体的に主張が一貫した読みやすい内容であった。才能が環境によって培われるという主張は、誰しもが平等に才能に恵まれていることを示唆しており、勇気づけられる内容である。とくに人生で才能の差を感じている人には、そのコンプレックスや暗示から抜け出すために本書を読まれることをお薦めしたい。しかし他方で主張が一つに集約しているということは、あまりそれ以外に得るものは多くないという短所でもある。はなから才能など生まれ持ったものではないと考えている人にとっては読む意義は薄いかもしれない。
 最後に、翻訳者の勝間和代さんの「解説」で、著者「マルコム・グラッドウェル」を「天才」「鬼才」と連呼しているのは違和感があった。本書「天才!成功する人々の法則」は実は「天才」などいないという皮肉を込めたタイトルであろう。その著者を「天才」「鬼才」と連呼する勝間さんのズレは何なのかと思ったわけである。

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