飲食業界にはびこる問題を覆面フードライターが指摘する! 飲食店の常識、非常識

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グルメの嘘 (新潮新書)

概要

“自腹・覆面取材”を貫くフードライターが、飲食業界やメディアへの批判と提言を。

批評なき日本の飲食業界

日本のフードジャーナリズムには批評がない。検証や批判では視聴率は稼げず本も売れないからだ。店から訴えられるリスクもある。美味しいと言っておけば店も喜ぶ。

そもそも本気で批評するなら、同じ店に何回も通うなど手間がかかり儲からない。著者のグルメ批評に関わる収支は年間200万の赤字だ(著者は別に本業があるが)。生計を立てられないライターは、宣伝のような記事を書いて恩を売り、店と癒着。飲食店のコンサルタント業や、“信奉者”を招いた食事会で稼ぐ。結果、ヨイショライターが増殖する。

飲食店の情報はあくまで一般客目線であるべき。そのためには、店側と一定の距離をおかないと評価が不可能なはず。自分がプロデュースした店を、他の店と同等に評価できるわけがないだろう。私の評価にクレームをつける店があるが、悪い店をよいと書くほうがまずいこと。批判を受けたくなければ、そもそもマスメディアに露出するべきではない。

私(著者)は覆面取材にこだわる。実名を出すと店側はヨイショ記事を期待し特別待遇でもてなすので、正当な評価ができない。そこに無自覚で、自分はいい料理を食べて金を稼ぎ、読者には無責任な記事を垂れ流すというのは、背信ではないか。

飲食店の常識が、客には非常識

性格の悪い料理人にいい店はない。本来、あるレベル以上の料理人は、最高の素材があれば誰でも最高の料理が作れる。が、現実は経営上どこかで妥協が必要。そこで利益を取るか、質のキープを取るか。経営者の「性格」が判断のカギとなる。一般的に再開発ビルの店は地代が高く、経営優先で劣化した店が多い。安易に支店を拡大する店もしかり。

ビールを置かない店は悪質。ワインなど相場が分かりにくいドリンクで高めの値付けにし、儲けようという魂胆だ(ビールは相場が分かるから、高い値付けにできない)。「寿司にはワイン」というキャンペーンにも、酒で儲けようとする意図が見える。普通に日本酒のほうが寿司に合うはず。

カード手数料を客に転嫁するようなセコイ店はNG。そんなことを考える暇があるなら、もっと料理に気を遣うべきだろう。海外三ツ星店の提携店も、シェフがロイヤリティだけで儲けようとしていてやる気がない。

「4~12月は天然鰻を仕入れる」という店があるが、天然は希少なはず。実は「天然も仕入れる」という意味で、ほとんどの料理は養殖なのだ。「大間のマグロ」も不自然なほど多い。他地域の稚魚を大間に持っていって流通させるだけで、もはやブランド偽装。

「1人客お断り」「コースの事前選択」を強要する店は、売り上げや効率運営を優先するための悪癖。店の都合や食べ方を押し付ける高飛車な料理人もいる。グルメジャーナリストはそんな店をもてはやすべきではない。「混んでいる店は美味しい」という先入観を利用し、電話をずっと話中にしたり、予約をキャパの半分しか受けずに満席をアピールする店もある。

客側の問題

客にも問題がある。やたら自己顕示欲が強い客。大声で自分が行った店の自慢をしたり、常連顔をして高級店で賄い飯を頼み、雰囲気をぶち壊す。料理人に金品を送る客すらいる。店をつけあがらせるだけだ。

ランチのオバサマ族。おしゃべりに夢中で、料理の質に無関心。これは店の手抜きを助長する。化学調味料にも敏感でありたい。調味料を減らすと「味が落ちた」と評判を落とした店がある。これでは出汁をとる技術が育たず、店の調理技術の低下を招く。私語厳禁の高圧的な店で旨そうに食べる、マゾな客もおかしい。そこまで店に卑屈になる必要はない。

ぬるま湯の中では店が育たない。客にも一定のレベルを求めたい。

日本に根付かないミシュラン

そもそも合議制では評価者の嗜好が反映されず、有効な情報にならない。調査員の経験や数にも疑問が残り、リサーチの甘さが懸念される。掲載拒否が多かった京都では、「拒否するのはおかしい」と店を批判したことで敵に回した。日本の感覚を受け入れず、今後掲載店の☆の上下だけで毎年勝負するのは無理だろう。

ではいい飲食店の条件は?

まとめると、理想の店は(1)キャパは20名前後(2)マスコミの露出は極力控える(3)シェフの顔を見せる=嗜好などを公開(4)酒類で儲けを出さず適度な値付けに(5)素人の指摘にも耳を貸す(6)むやみに拡大経営しない。見栄を張らない店。何事にも正直であるのが一番だ。

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