「世界征服」は可能? 世界征服のノウハウ

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「世界征服」は可能か? (ちくまプリマー新書)

概要

アニメや特撮ヒーローを例に世界征服のノウハウを探りつつ、現代における世界征服の逆説的な姿を考察する。

世界征服にはビジョンが必要

(1)人類絶滅/宇宙戦艦ヤマトのガミラス人がこのタイプ。自分が移住するため邪魔者を滅ぼす。

(2)金がほしい/ヤッターマンのドクロベエなど。この場合、人類が絶滅したら貢ぐ人がいなくなるので困る。征服者の多数派。

(3)支配されそうだから逆に支配する/ガンダムのジオン公国。この場合必ずしも征服者が悪とは限らない。

(4)悪を広める/ドラゴンボールのピッコロ大魔王が代表例。悪の浸透を至上の喜びとする。

(5)意味不明/北斗の拳のサウザー。子供に過酷な労働を強いて喜ぶ。大人を働かせる方が能率的なんだが。

自分がどんなタイプの支配者かを知っておこう

(1)魔王タイプ/日本人皆殺しをもくろむ、レインボーマンの死ね死ね団など。皆殺しという手間がかかることをするのは、ある意味信念が強いとも言える。

(2)独裁者タイプ/DEATH NOTEの夜神月、バビル2世のヨミ様など。何事も自分で指示する必要があるため休む暇がない。実際、ヨミ様は3回も過労死した。

(3)王様タイプ/とにかく贅沢三昧がしたい。自分大好き。ドラゴンボールのレッドリボン軍総帥や北朝鮮の金正日など。

(4)黒幕タイプ/007のスぺクターなど。優れた頭脳を持ちながら、あえて不法行為にこだわる。

具体的に世界征服のプロセスを検討

(1)目的設定/世界征服後のビジョンを示せば、理念にひかれて人材が集まりやすい。征服したとたん燃えつき症候群になることも防げる。

(2)人材の確保/人集めの際は、征服後のメリットをしっかり説明する必要がある。本郷猛を仮面ライダーに改造したのに逃げられて敵に回すという、ショッカーの愚行は避けたい。世界中に養成所を設置したガッチャマンのギャラクターのように、自前で人材を育成するのも手だ。ほか福利厚生で人件費が意外にかかるので注意を。

(3)資金調達と設備投資/最初は阿佐ヶ谷・高円寺あたりのアジトから始めて、ゆくゆくは秘密基地の建設を。費用はパトロンの寄付や銀行強盗などで調達。

(4)作戦と武装/勘違いしがちだが、最終目的は騒乱を起こすことではなく、新秩序への移行。幼稚園バスを襲って喜ぶなど、混乱させただけで満足しないように。銃はターミネーターのように銃砲店で奪えば、購入の手間が省けていい。また、毒ガスは比較的容易に作れる。

(5)部下の管理と粛清/悪におぼれて、部下を雑に扱わないように。「失敗したら死ね」は悪の組織らしくてカッコいいが、被雇用者側としては不安が増すだけだ。一般企業以上に労働条件には気を遣いたい。

(6)征服後をイメージする/高いビルから街を見下ろして酒を飲むもよし。ハーレムを作るもよし。銅像を作るもよし。忘れていけないのは後継者問題。後々面倒なので、無難に息子を擁立しておこう。

征服後は本当に幸せなのか

◆悲しいことに、征服者が幸福になれるとは限らない。「被支配者は貧乏で、自分だけ豊か」というのが成り立たないためだ。例えば、市民が豊かでないと質の高い快楽が享受できない。金正日は北朝鮮を支配しているが、映画や音楽など娯楽は輸入頼りではないか。

◆正直、現在は世界征服のメリットがない。以前は階級の断絶があり、支配者は下層民が絶対に手が届かない権力や快楽を得られた。だが大衆化社会では、金さえあれば誰でもアクセスできる。危険を冒して世界を征服するより、市場経済に身を委ね、質の高い娯楽を享受する方が、圧倒的に楽しい生活を送れる。

それでも世界征服するなら

◆いまや「経済と情報の自由化」によって支配層・非支配層が消滅した。それでも世界の支配にこだわるなら、どんな状況が考えられるか。

◆悪の概念は時代によって違う。「悪=時代の価値観や秩序の破壊・否定」と定義すれば、豊かな大衆社会を生んだ「経済と情報の自由化」を否定すること=現代の世界支配だ。

◆自由経済を否定して「貧富の差をなくそう!」。情報の自由化を担うインターネットを否定し「ネットの断片的知識より、先生や上司の意見を聞いてしっかり考えよう!」と抗う。ハートウォーミングな団体になりそうだが、それが現代の悪の結社の姿なのだ。

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