魂萌え!〔上〕の書評・感想

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魂萌え!〔上〕 (新潮文庫)

来年60歳になる関口敏子は、それまでの人生を、ごくごく普通に、「恙無く」としか表現しようのないほど平凡でなんでもない人生を歩んできた。夫の隆之と結婚し、彰之と美保という子供をもうけた。二人はそれぞれに独立し、夫と二人暮し。夫は趣味である蕎麦打ちに打ち込んで、敏子はその生活を支える。平凡だがまずまずだと思える人生だったはずだ。
ある日、夫が突然に死んだ。心臓発作で、浴室で倒れているのを敏子が見つけたのだ。人生の伴侶を失った悲しみを感じる余裕もないまま呆然とした日々を過ごす敏子。
しかし、敏子のそれからの人生は波乱を含んだものになっていく。
隆之の携帯が鳴り、そこから隆之が生前付き合っていた愛人の存在を知ることになる。詳しく知るにつれて、自分は夫に裏切られていたのだと悲しくなっていく。
それだけではなく、二人の子供が隆之の遺産を巡って争うようになる。母親である自分のことなど顧みず、自分達の都合だけでどんどんと話を進めていこうとする二人に、敏子はどんどんと哀しくなっていく。
まさか、老後を一人で過ごすことになるとは思わなかった。高校時代の友人で、今でも中のいい友人に相談をしたり、見ず知らずの人間と交友を持ったりしながら、敏子は自分がどんどん変わっていくことを自覚していく。
「妻」でも「母」でもなくなった、女として老後を生きる自分。今まで知らなかった自分の存在を知るにつけ、敏子は、老いるということに真剣に向き合っていくことになる…。

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