グロテスク〈上〉の書評・感想

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グロテスク〈上〉 (文春文庫)

本作は、ある一人の女性(名前はたぶん出てきてないと思う)の独り語り、という体裁の作品です。彼女は現在、役所でアルバイトをしているフリーターで40歳。そしてつい最近、妹のユリコと、高校時代の同級生の和恵の二人が殺され、それについて、過去の回想も含めながら語る、という感じです。また、ところどころ、手記と題して、三人の人間の日記などが挿入されます。
本作は、あの(と言ってもよく知っているわけではないですが)「東電OL殺人事件」をモチーフにした作品のようです。「東電~」の事件をほとんどまったく知らないのでなんとも言えませんが。
ユリコと和恵は、殺された段階で娼婦であり、そして娼婦として仕事をしている時、客の一人に殺されたのです。犯人は、中国人の男と判明して、逮捕もされています。
語り手の女性は、自らの半生も織り交ぜながら、子供の頃から現在までの、ユリコや和恵に関わる部分を語っていきます。
語り手の女性の妹であるユリコは、見る者が振り返らざる負えないような、絶世の美人でした。それは子供の頃からで、姉の自分とはまるで似ていないのです。容姿については、常に妹にコンプレックスを抱いていました。
二人はハーフで、父親がポーランド系スイス人で、母親が日本人です。
語り手の女性は妹のことを、あまりにも美しすぎるが故に怪物と呼んでいて、常に仲が悪いまま、妹に翻弄されるような人生でした。
和恵とは高校時代に出会います。その高校は、有名なレベルの高い高校で、初等部から大学まであります。和恵も語り手の女性も高等部から入ったわけですが、内部生との壁というか距離というか、そうしたものが初めから圧倒的でした。語り手の女性は、その序列で満たされた社会で、まともに生き抜くことを早々に諦めたのですが、和恵という女性は、頭でっかちというか、融通が利かないというか、とにかく鈍感で、理屈で物事を通すような女性だったが故に、とんちんかんなことをやって、次第に周囲から阻害されていくようになります。
そして何とその高校に、妹であるユリコも入学してしまうのです。
さて、殺される前のユリコと和恵ですが、先ほども書いたように娼婦でした。ユリコは高校の頃からずっと娼婦のようなことをしてお金を稼いでいました。男がいないと生きていけない人間なのです。和恵は、有数の建設関係の企業に就職しますが、いつしかOLと娼婦という二束のわらじを履くようになります。
誰がどの段階で落ち始めていったのか。ユリコと和恵は何故娼婦になり、何故殺されたのか?語り手の女性の人生はどうなのか。
グロテスクなまでに人の醜い部分を露に描いた、残酷でリアルな物語です。

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