邪魅の雫の書評・感想

2317views黒夜行黒夜行

このエントリーをはてなブックマークに追加
文庫版 邪魅の雫 (講談社文庫)

榎木津礼次郎が探偵として掲げる薔薇十字探偵社で探偵見習として働く益田にとっての事の始まりは、榎木津の親類だというある男が持ちかけてきた話から始まる。
榎木津に縁談の話がある、否、あったのだという。しかしそれが、悉く破談になる。しかも、先方から断られるのだという。
榎木津と言えば、それはもう言語に尽くしがたい変人ではあるが、学歴もあれば財閥の御曹司でもありかつ見目もいいというわけで、会いさえしなければそんなことは知れない。縁談のあった相手は、榎木津に会うことなく破談と判断をしているわけで、これはどうにもおかしい、とその親類の男は語った。
益田からすれば、榎木津に縁談というだけでも充分に馬鹿馬鹿しい話なのだが、その親類の男は、この件を調べろ、という。これはおかしい、何か大きな陰謀でもあるのではないか、とそういうのである。益田としては、榎木津に隠れてこそこそ探偵仕事をするのは嫌だ。しかし、まあやらないわけにはいかないだろう。
と奮起してみたはいいのだが、いつの間にやら不穏なことに巻き込まれていくのである。
刑事である、否、今は一介の警官である青木にとってことの始まりは、青木のいる管轄で起きたある毒殺事件だった。
そのことで青木は、元上司であり、不良刑事であり、青木と同じ理由で一緒に処罰されどこかで同じく警官をやっている木場に相談した。
納得がいかないのである。
死体は河のほとりで見つかった。死因は毒殺、青酸系の毒物らしい。
納得がいかないのは、本庁の見解についてだ。
青木のいる管轄の所轄は、聞き込みを広くやって、赤木というなのチンピラを容疑者の一人として挙げた。事件当日目撃されたという話もあるし、どうやら赤木のものらしい手帳も現場に落ちている。しかも、被害者の恋人だったらしい女との関係もあるようだ。事実、被害者の恋人だと思われている女性の写真を、赤木がいた組の人間に見せると、そうとう入れ込んでいたようだ、というような証言が出てきたからである。
しかし、本庁はその赤木の情報に耳を貸さなかった。事実はすべて上へ上げられてはいるが、本庁は無関係と判断した。
その点に納得がいかないのである。
しかも、公安が出張って来ている。たかが毒殺の事件に公安である。不穏な感じである。また、第二の事件も発生している。女学生が大磯の海岸で同じく毒殺されたのだ。何を以って連続殺人だと判断されたのかわからないが、少なくとも上は連続だと見ている。
もう、よくわからない。
青木の始まりは、そんなよくわからない事件から始まった。
また、平塚のあるアパートで、同じく毒殺された女性が発見された。男に付きまとわれていたという話があったり、住んでいた女性が偽名だったりと、こちらも初めからさっぱりわけがわからない。
そうやって、事件は始まっていく。
青木や益田や警察は、それぞれ独自に情報を集めていく。しかし、それでもまるで見えない。事件はどんどんと発生していく。人がどんどんと死んでいく。どれもこれも毒殺で、しかも連続殺人なのだという。連続しているようで、しかし関連性が見つからない。関連性はちらほら見え始めるのだが、全体としてどうにも落ち着かない。
次々に人が死んでいく。多くの人が事件を追いかける。

関連まとめ

本のまとめカテゴリー


コメントを書く