後巷説百物語の書評・感想

1444views黒夜行黒夜行

このエントリーをはてなブックマークに追加
後巷説百物語 (角川文庫)

恐らく30代だった百介が、本作では立派なご隠居、九十九庵という名の家に一白翁と名乗って隠居しているじいさんである。

「赤えいの魚」
剣之進の持ち込む事件が発端だ、と書いておきながら、この話だけは少し違う。
発端は、世次郎がちらりと話した、ある島が沈んでなくなったという話に始まる。その真偽を確かめたかった剣之進は文献に当たるが、どうにもハッキリしない。そこで一白翁の元へと向かうのだが、そこで、年中霧に囲われた、一度行ったら二度と戻ってくることのできない島の話を、一白翁に聞かされることになる。
エビスの顔が真っ赤になったことで滅んだ島があるのだよ。
一白翁は、そういって話を始めるのである…。

「天火」
剣之進懸念の事件というのは、ある火事である。どこぞで大火があったのだが、下手人と目された女が奇妙なことをいうのである。
火の玉が建物の中に入ってきた。その中には、先妻の顔がくっきりと見えた。
剣之進は、火の玉が火事を起こすことはあるのか、火の玉の中に顔が見えることはあるのか、ということを問う。結論のようなものは出るには出るが、一白翁の話も聞きに行くことに。
すると、一白翁の口から、かつての文献に載せられていたのとまったく同じ構図の事件が語られることになる。
人望のある代官様。淫蕩の病を持つ妻。霊験新たかな坊さんに治してもらおうとするが、妻に誘惑されたその坊さんを、代官様は殺してしまった。正気を失った代官様と妻は、天火によって焼かれてしまったと、そういうお話。
剣之進の事件の真相と、かつての天火の真相は?

「手負蛇」
剣之進懸念の事件は、今度は蛇なのである。
どこぞで、蛇にかまれて死んだ男がいる。それだけなら、ただの事故のはずなのだが、そう簡単にもいかない。
問題は、70年近く開けられることのなかった祠の中にあって石で出来た箱の中にいた蛇が男を殺したということなのである。
蛇が70年も箱の中で生きるものだろうか。
もし70年も蛇が生きるというなら、これは事故だ。しかし、そうでないというなら、下手人がいるはずなのだ、という話である。
なるほど難しい話だということで、いつものように一白翁の元へと向かうと、なんとその老人、その祠が作られた時その場にいたのだという。老人の語る物語から導かれる真実は…?

「山男」
剣之進懸念の問題は、今度は山男である。
山男は人なのか獣なのか怪物なのか。
発端は、ある村で起きた娘の失踪事件である。突然いなくなった娘を探しに行った男が殺されるという事件もついている。
さてその娘、なんと3年近くしてから発見された。しかし、なんと子供を背負っていたのである。娘は発見された当初錯乱していて、うまく話すことができなかったようだ。しかし、異常に体のでかい恐ろしい男に襲われたというようなことを言っていた。
それで、山男である。今村では、山男を狩り出そう、という動きがある。山男が人間ならば、それは止めさせねばならない。しかし、獣だとするならば、子供が生まれるわけはない。一体どうなのだろうか。
いつものように一白翁の元へと向かう一行。そこで彼らは、百介自身が実際に遭遇した山男の話を聞くことになる。そして、剣之進の持ち込んだ事件に対して曖昧な態度を取る百介に代わって、百介と一緒に住んでいる小夜という女が、事件の真相を看破する。

「五位の光」
剣之進の懸念は今度は事件ではなく、さる筋からの相談なのだという。それは、帝に関わるかなり位の高い人からの相談である。
さて今回の問題は、鷺である。鷺は光るのか否か、ということだ。
その位の高いお方には、ある記憶があるのだという。どこぞの沼地。自分はまだ3歳くらいで、女に抱かれている。そこに父親がやってきて、なんと女に土下座をするではないか。女は父親に自分を受け渡すと、なんと女は鷺に代わり空へと飛んでいったのだという。その鷺の体は青く光っていた。
これは、事実なのか、あるいは私の幻覚なのか。そういう相談である。
百介の述懐が、物事の裏の裏まで明らかにする。

「風の神」
剣之進の懸念は、またも相談で、今度は、百物語の正式なやり方はどんなもんであろうか、というものだ。
先の事件で関わった高貴なお方の筋からの依頼で、ある塾の門弟が、化け物はいるのかと問われ、流れで、ならば百物語にて検証しようではないか、ということになったらしい。
さて、百物語をすることになったのですと、一白翁に伝えに行った与次郎はそこで、小夜の出生について知り、また一白翁からある頼まれごとを受けることになる。それは、ある高貴な坊さんをその百物語に混ぜて欲しいこと、そして最後の話を自分にさせてもらいたい、ということである。
さて百物語当日。一体何が起こりますやら…。

関連まとめ

本のまとめカテゴリー


コメントを書く