続巷説百物語の書評・感想

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続巷説百物語 (角川文庫)

本作では、層の狭間で生き迷っている人が様々に出てくる。現実に生きる人々の世界に、妖怪が不自然に、不用意に、不穏に混じり込んでしまっていると言ってもいいかもしれない。そんな混沌とした世の中を、言葉一つで巧みにまとめ上げてしまう輩がいる。
小股潜りの又市。
この又市という男、決して善人というわけではないが、悪人でもない。最終的に金儲けのためとはいえ、もてる限りの力と言葉と策と仲間とを使って、普通にはどうにもならない無理難題を、言葉巧みに妖怪の仕業に仕立て上げ、八方うまく治めてしまう、という離れ業をやってのける人間なのである。又市の仕事を手伝う仲間も方々にいるが、どいつもこいつも一癖も二癖もある、一筋縄ではいかない御人ばかりである。
主人公は山岡百介という、戯作者志望の男である。
その百介は、ふとしたことから又市らと知り合うことになる(これは前作「巷説百物語」での話)。以来、又市らが仕掛ける仕掛けの手伝いをするようになっていった、という関係。

そんなわけで、それぞれの話を紹介しようと思う。

「野鉄砲」
百介は、兄軍八郎に呼ばれて行ってみると、額に石の礫が突き刺さった奇妙な死体を見せられる。人の仕業だというなら下手人を挙げなくてはいけないが、どうにも人の仕業とも思えない。かといって妖怪の類の仕業あんおだろうか?その手の不思議な話に強い百介が呼ばれたのは、その辺りの事情からだったようだ。
よくわからないままに百介は江戸に戻り、偶然会った又市らにその話をすると、予言めいたことを言ってどこかに出掛けてしまった。一体どんな仕掛けが、というよりもまず、何が起こっているのやら…。

「狐者異」
百介は、行きたくもない刑場へと向かっている。そこには晒し首があるはずだ。捕まった極悪人の首が置かれているのだ。それだけなら、残酷なのが嫌いな百介は行かないが、その極悪人にはよからぬ噂がついて回っているのである。
何度首を切っても生き返る。
既に二度生き返り、首を切られたのは今回で三度目。そうした不思議な話があればいかないわけにはいかない百介は刑場へと向かっているのである。
しかしその途中、又市の仲間猫廻しのおぎんと出会う。おぎんは晒し首を見ると、「まだ生きるつもりかえ」と呟くのだが…。

「飛縁魔」
貸本屋の平八が、百介にある頼みごとをした。それは、百介の後ろにいる又市らのことを見込んでの頼みごとだたのだが。簡単に言えば人探し。しかしこれがなかなかに簡単じゃない。
大金を持って、花嫁衣裳のまま倒れていた女と結婚しようとした金持ちがいて、しかし祝言の間際にふいと消えてしまったのだという。以来、実直だったその男は腑抜けになり、商いもうまくいかなくなるほど。しばらくしてその家の者が、その白菊という女を江戸で見た、という報告をするや、主人は狂ったかのようにある建物を立て、準備は整ったから帰ってきてくれ、と祈っているのだそうだ。
その白菊という女性を探してくれ、という命。又市の耳にいれるとなんやか動き出す。悲しい女性の生涯を辿るような切ない物語。

「船幽霊」
前作「巷説百物語」での狸の仕掛けの後、わけあって土佐に行くことになった百介とおぎん。追われているような気配を感じて、追っ手らしき人を撒こうと思ったが、どうにも囲まれて、危ういところを助けられた。
助けてくれた侍は、東雲右近といい、ある藩の命を受けて人探しをしている途中だという。その藩では今、辻斬りが横行していてひどい状況らしい。その下手人の当て推量をした家老が、その人物を探してくれと頼み、土佐くんだりまでやってきたという。
右近を含めた三人はそこで、川久保という集団に絡んで様々に大変な目に遭う。おぎんの隠された用事も明かされ、もはや命もこれまでというような場面もあったりする。

「死神 或は七人みさき」
又市の仲間の事触れの治平の元に、東雲右近がやってきた。人探しの命を受け、辻斬りが横行しているという藩に戻ったが、子を宿した妻が殺され、あまつさえ殺した疑いを掛けられて、江戸くんだりまで逃げてきたのだという。
それをきっかけに、その藩を巡る壮大な仕掛けが施される。複雑に絡み合った関係や利害を取り壊し、様々な人の想いを組んで、しかも藩を存続させようという、壮大にして無謀な仕掛けを、又市らは苦労して実行する。

「老人火」
「死神」の事件から6年。百介はその時から又市らにあっていない。風の噂で時折耳にするだけだ、百介はその間に、物語作家として多少有名になっていた。
そんな百介の元に、あの藩から侍がやってきた。どうも、藩建て直しの功労者とも言える家老が、ちょっとおかしくなっているのだという。出来れば又市と取り次いで欲しいということだったが、なにぶん百介にも行方はしれない。
とにかくその藩へと行くことに決めた百介だったが、そこで又市らの姿を見ることになるが…。

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