どすこい。の書評・感想

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どすこい。 (集英社文庫)

本作は、パロディ作品である。短編集なのだが、それぞれの作品は、様々な有名作家の作品からタイトルを取り、内容設定も多少ながら戴きながら出来あがっているのである。正直、こんな作品は読んだことがない。
そしてそれでいて、本作はギャグ作品でもある。あの、沈着にして冷静な京極堂を描き、緻密にして大胆なシリーズを物する偉大な作家京極夏彦とは思えないような、ある意味大胆、ある意味暴走気味の作品である。
確か記憶は曖昧だけれども、東野圭吾の「快笑小説」か「毒笑小説」という作品の巻末に、東野圭吾と京極夏彦のお笑い作品に関する対談、といったようなものが掲載されていて、そこで二人が共通して書いていたことが、お笑いの作品の方が遥かに書くのが難しい、ということです。とにかく、テンションの高いうちに一気に書き上げてしまわなければいけないし、何よりエネルギーを消費するのだそうだ。長く書くことも出来ないし、やはり短編になるのだという。そう考えると、ギャグ的な要素を多分に盛り込みつつも長く連載の続いているコミック作品というのは、なかなかにすごいのかもしれない。
本作の巻末の著者自身による解説でもこう書いている。
「漫才師に芝居は出来るが、役者に漫才は出来ない」
確かに、まさにその通りだな、と思うのである。
正直に言って、特に説明しなければならないほど内容のある作品ではないのだけれど、とりあえずそれぞれの作品の紹介だけはしようかと思います。内容がないからといって馬鹿にしているわけではなく、なかなかに面白いです。余りの馬鹿馬鹿しさと、普段の京極作品とのギャップがかなり新鮮です。
全体的な内容に軽く触れると、それぞれパロった作品の設定や構成や状況を踏襲しながらも、とにかく掛け合い漫才のような会話や展開が怒涛のように続きます。そしてそれぞれの作品が、大体その一つ前の作品の絡めた作品で、ある作品の謎が、その一つ後の作品で解かれたり、とかもします。そんな感じの作品です。設定上、それぞれの作品は別々の著者が書いたことになっていて、それぞれ著者名が違います。著者紹介もそれぞれに載っていて、なかなか面白いです。

「四十七人の力士」新京極夏彦
 「四十七人の刺客」池宮彰一郎
要するに、赤穂浪士四十七人の替わりに、裸にまわしの力士四十七人が吉良邸に赴く…とただそれだけの、それ以上でも以下でもない作品である。ある意味寝耳に水の吉良邸で一体何が行われるのか…

「パラサイト・デブ」南極夏彦
 「パラサイト・イブ」瀬名秀明
ただの凍結ミイラ、死蝋ならよかったのだが、いかんせん、どうにも厄介な、つまり丸々太った、しかも生きている凍結ミイラが見つかった…そうな。理系の知識を一切持たないサイエンスライターと編集者の調査もの、といったところか。

「すべてがデブになる」N極改め月極夏彦
 「すべてがFになる」森博嗣
前作「パラサイト・デブ」を読んだ読者から、似たような状況があるから是非来てくれ、とファンレター。なんでも、古墳に入った研究者が何かを見つけてそこに研究所を作り、一向に出てこない…のだとか。やっぱり所謂密室が出てきたりして…

「土俵(リング)・でぶせん」京塚昌彦
 「リング・らせん」鈴木光司
50年前に、呪われた小説、というものがあったらしい。というか、それを読んだ人は悉く死んだらしい。その数47人。現在、その呪いで死んだのではないか?という祖先を持つ二人がその呪われた小説の話をしていて…

「脂鬼」京極夏場所
 「屍鬼」小野不由美
ある閉鎖的な村でどうにも奇妙なことが起こっている、と。なんでも、火葬にしても骨が残らない。死んだ人間が丸々太って生き返る。なんだそりゃ。藪医者や生臭坊主や火葬場のクソ野郎なんかが疑われたりして…

「理油(意味不明)」京極夏彦
 「理由」宮部みゆき
前作「脂鬼」を、書いた覚えはないのに自分の名前…らしきペンネームで載っているのを発見し、担当編集者に聞くと、ってあれなんでそんな話から、代々に渡る力士親子の闘いの物語になったんだっけ…?

「ウロボロスの基礎代謝」両国踏四股
 「ウロボロスの基礎論」竹本健治
割と実在しそうな編集者と、現実に存在する作家が実名で出てくる、本当に「ウロボロス」的な作品。作家京極夏彦が、47人の力士に誘拐された…のか?とりあえず失踪してしまった京極夏彦を巡る物語。

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