巷説百物語の書評・感想

1766views黒夜行黒夜行

このエントリーをはてなブックマークに追加
巷説百物語 (角川文庫)

本作は短編集なんですが、いきなり解決編のような感じのする物語です。解決編のはずなのに、何を解決するのかわからず、解決策自体が謎、という奇妙奇天烈さです。
「真実」を作る、という言葉そのままの物語で、やはり京極夏彦は見事だな、と思いました。
どの依頼もかなりの難題で、普通にやってはどうにもならないものばかりだけれど、小股潜りの二つ名を持つ口の達者な又市を始めとする集団が、ものの見事に解決する手腕は素晴らしいです。
というわけで、それぞれの短編を紹介しようと思います。

「小豆洗い」
雨に降られ、ある小屋で雨宿りすることにした僧。その小屋には結構な数の人々がいて、止まない雨を背後に、百物語でも、ということに。全国行脚で不思議な話を仕入れている百介はこれ幸いと話を聞くが、どうにも様子がおかしい…

語りのみで謀る見事さが圧巻です。

「白蔵主」
狐を殺して皮を売っていた猟師が、狐を奉ったと言われる祠の前である女に出会う。奇妙なその邂逅を人に話せば、そりゃあ狐に騙されたんだ、とこう言う。百介が話す狐の話を聞いてその猟師は…

実はちょっとあまり印象に残っていない…どんな仕掛けだったか…

「舞首」
怪力に任せて女を浚って陵辱する大男、人と見れば斬りたくなる侍、極道の頭で非道なことを繰り返していた男。この三人が、又市等の仕掛けで吸い寄せられるように一所に…そこで一体何が…

あまり想像したくない最期です。なんだか、あまりにシュール過ぎて現実感が失われそうな気がします。

「芝右衛門狸」
人に化けたる狸がいる、と評判になった屋敷。その主人は完全にそれを信じ、家人もまあそうなのかと思っている。周囲も、あの主人がいうなら…という感じ。一方で、人形遣い一座に身を寄せることになった一人の侍。暴れてかなり困り者で手に余るが、藩主からの依頼であるため断れない。この二つが交じるとき…

全作品中、もっとも見事だと思いました。又市が抱えた難題を、確かに唯一解決しうる奇策だな、と。

「塩の長司」
塩で財を成した先代の娘婿となり、馬でさらに財を増やした二代目。ある時盗賊の襲撃に遭い家族を失い、一人生き残った二代目は、その日以来おかしくなった。人前に出なくなり凶暴になった二代目は病に倒れ…

呑馬術、というのがどうもイメージできないのだけれど…

「柳女」
ある宿屋の中庭には、それはそれは巨大な柳が聳えている。祟りありとまで言われる柳だか、実際に祟りらしきことが起きてしまった。今の代の主人の子供の首が柳に絡まり死んだという。その後も不幸は続き、それ以上の凶事を防ぐため、又市が乗り出す…

今回は、仕掛けというほどの仕掛けはまあないけど、かなり異常な真相です。

「帷子辻」
帷子辻、と呼ばれる辻で、腐乱死体が見つかるという事件が相次いだ。そこにずっと置かれていたわけではなく、腐乱してから捨てられた死体。遺体になってから盗まれたり、自殺死体もあったりで、誰が何のためにしているのかまったく不明。又市の仕掛けが事件を暴く…

これもまた見事な手腕で、そして先に負けず劣らず異常です。「嗤う伊右衛門」との関わりも少し。

関連まとめ

本のまとめカテゴリー


コメントを書く