今昔続百鬼-雲の書評・感想

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今昔続百鬼-雲 (講談社ノベルス)

本作は短編集(京極作品の場合、中編集と言ったほうがいいかもしれないが)で、舞台は戦後間もない時期。主要な登場人物は二人。
一人は沼上という男で、物語の視点人物である。各地の伝説好きが高じて、戦前に仲間と共に伝説関連の同人誌まで発行してしまうほどの男である。
さて、もう一人の男。こちらが、あの榎木津にも負けず劣らずの突飛な人物なのである。
多々良という、もうとにかくの妖怪馬鹿。四六時中妖怪のことしか考えず、戦前に、妖怪で有名な先生に自分の論文を見てもらおうと無茶している時に、沼上と多々良は知り合った。
まあ、ただそれだけの人物ならば大したことはないのだが、この男はある意味只者ではないのである。口を開けば妖怪妖怪で、まず感謝や謝罪を述べるべき場合でも、とにかく妖怪の話を捲し立てる。周囲に迎合することをよしとせず、自らのやりたいように押し通すから、相棒の沼上はたまらない。正論を振りかざして自分の非は一切認めない。沼上は、もう太ったその肢体を見ているだけでもイライラするように。
まあ、そんな凸凹な二人は、しかし、妖怪と伝説という、まあきっても切れないようなものを好きなばっかりに、つかず離れずという感じ。二人は、なんとか金をためては、それを一気に使い果たすように各地へと飛び回り、金の持つ限り無茶な安行を続けるのである。彼らはそんな旅の最中に、珍妙な事件に次々と巻き込まれていくのである。何故か事件は、多々良のお陰で解決してしまうのだが、多々良はただ妖怪のことを考えているだけなわけで、何が真相なんだかわからない。多々良はそれぞれの話の中で、鳥山石燕が書いた妖怪図の解釈を思いつくだけなのだ。
とまあ、大筋ではそういうスタイルの話です。この多々良という妖怪好きは、記憶が確かなら、「絡新婦の理」にも出てきたように思う。京極堂の妹の勤める出版者で、妖怪の話の連載を持っているとかいうのである。その京極堂、今回ちらりとだが出てくる。
さて、それでは、それぞれの話を紹介しましょう。

「岸涯小僧」
伝説探訪に来たはいいが、多々良という男、目的地までを直線に進むという頭しかなく、結局道なき道を歩く羽目になり、やはりというか、彼らは今かなり山奥深いところをうろうろしている。人家があるようには見えず、やはり二人は険悪な感じである。川岸に辿り着いたとき、二人は「河童」という声と争うような物音を聞き、人家を探すよりもその辺りを捜索したがなにも出てこない。ようやく辿り着いた村には、超のつく妖怪好きの老人がいて、そこに泊まれることになるのだが、翌日、昨日の現場にもう一度行ってみると、そこで彼らは死体を発見してしまう。多々良の迷推理が光る。

「泥田坊」
例によってかなり遭難している二人。結構尋常じゃなくやばい。なんとか村らしきところへと辿り着いたはいいが、人っ子一人いない。いや、唯一動くものは、全身が黒く、ふらふらと歩く、それは奇妙な人らしきものだけだった。村は今忌みごもりだかで、ずっと家に籠っている日なのだそうだ。そんな迷信をあまり信じないという男の家に泊めてもらい一難去ったが、帰ってこないその家の主を探そうと神社へ向かうと、そこでまたも死体を発見してしまうことになる。雪積もる周囲には、被害者以外の足跡はなく、忌みごもりで誰も外に出ない中、誰に殺されたのか?一旦は容疑者にされた彼等は考えるが…

「手の目」
大雪のために足止めを食らっている二人は、宿の主人が帰ってこないことを聞き及ぶ。村の男衆は、毎晩夜出掛けていって、ふらふらになって帰ってくるんだ、きっと女がいるんだ、などと女主は言うが、どうもおかしい。前々から頼んでいた、村の古老への取次ぎがようやくかない、会って話を聞いた帰り、偶然首吊りをしようとしている男を見つけてしまう。どうも不審なものを感じた二人は、先ほどの古老を呼んで事情を聞くと、どうも村全体に及ぶ危機を村の男衆は導いてしまったらしい。成り行きでなんとかすると言ってしまった二人は、村を救うために、村を脅かしている男の元へと向かうのだが…

「古庫裏婆」
金が乏しくなった二人は、これからの旅筋でもめている。二人は、なんとなく避けていた東北に来ている。というのも、かつての友人に即身仏の写真を見せられる、という、まあそこそこに長い経緯があるのだが。とりあえず入った宿で相部屋になった男に、ただで飯を食わせてくれる寺があると聞き、さらに酒を飲ませてもらって翌朝、荷物がからきしないことに気付いて愕然とする。相部屋だった男が盗んでいったのだ。駐在を呼んでどうしようかと話をしているうちに、そのまさに即身仏の件で東京から刑事と監察医が来たとかで、そして何故か二人とその監察医を加えた三人でその寺へ向かうことに。しかし、二人はそこで、世にも恐ろしい体験をすることに…。京極堂のお陰で二人はなんとか助かるのだが。

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