百器徒然袋 雨の書評・感想

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文庫版 百器徒然袋 雨 (講談社文庫)

天衣無縫にして傍若無人。元華族であり、今なお財界に多大な影響を与える父を持ち、それでいて何故か探偵などという職業をやっている。鳶色の瞳に白磁のような顔、容姿端麗、眉目秀麗。探偵のくせに調査も捜査もせず、それどころか依頼人の話すらろくに聞かない破天荒ぶり。口からでるは罵詈雑言、事件に関われば軽挙妄動、言っていることは意味不明で、やっていることは荒唐無稽。それでいて関わった事件では、ある意味快刀乱麻の大活躍。自らを神と呼んで疑わず、自分の上に人はいないと思っている。人の名前は一切覚えない。視力が弱い代わりに他人の記憶を視ることが出来る能力を持つ、どんな言葉を尽くしても表現できない奇人変人。
さて、一体誰のことを言っているのかと言えば、京極堂シリーズを読んでいる人にはあまりにもお馴染みで、そうでない人にはその輪郭すら描くことを許さない、そう榎木津礼次郎その人である。
そして今回は、京極堂を差し置いて、その榎木津が物語の主人公なのである。
<鳴釜>:僕(結局最後まで本名が明かされることはなく、榎木津にはいつものように毎度違う名前で呼ばれ、時には珍妙な偽名を拝命することになる、全編通しての視点人物)の従兄弟が自殺未遂をした。聞けば、輪姦され、あまつさえ子を生したのだという。輪姦したのは、ある高級役人の息子とその取り巻きだということはわかっているのだが、先方は金はくれてやる、という態度で謝罪もなく、僕はどうにかしたいという一心で知り合いにそうだんするのだが、そこで何故か悪名高き名探偵榎木津礼次郎を紹介される。探偵に何を依頼していいものかわからないまま、薔薇十字探偵事務所へ赴けば、そこで警察下がりの益田に、身の上を話す羽目に。謝罪は難しいとする益田を一喝した榎木津は、同じ目に遭わせてやると息巻く。さて、一体どうなることやら…

<瓶長>:榎木津の父からの依頼で、タイのお偉いさんに献上する瓶を探すように命じられた榎木津。もちろん自分で動くわけもなく、下僕である古物商の今川を呼びつけ探させる。一方で、珍妙な屋敷があると聞き及んだ僕は早速そこへと行ってみると、そこにはもう、屋敷中を壷で文字通り埋め尽くされた異様な光景が広がっていた。何でもそこには、榎木津の父が捜し求めている瓶があるとかないとかいう話で、しかもそこにはある古物商と金融屋とやくざが絡んでいるのだという。榎木津の父の可愛がっていた愛亀が逃げ出し、その捜索も命じられるなど、よくわからないまま事件は混迷し、混迷に応じて榎木津は大暴れしていき、文字通り粉砕しまくっていく…

<山颪>:これまた榎木津の父筋で、山嵐を探す羽目になった榎木津。しかし今度は榎木津自身が山嵐のとげとげを見たいようで、楽しんでやっているらしい。それはそれとして、僕はたまたまなのかなんなのか、珍妙な話を聞くことになる。あの箱根の坊主の事件で関わった修行僧二人が京極堂を訪れ、何でも大分昔の僧の同期に連絡をとったところ、その彼がいるようないないような、よくわからない応対を受けたのだという。初めはいないと言っていたのに、後から死んだととってつけたように言われたらしい。何でもその彼がいるはずの寺は、今はちょっとした有名な食い物屋になっているようで、角界の著名人専用の美食クラブなのだという。美術品ばかり狙う窃盗団の話も絡んできて、榎木津の奇行もさらにパワーアップ…

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