狂骨の夢の書評・感想

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文庫版 狂骨の夢 (講談社文庫)

今回ももう何もかもがぐちゃぐちゃ。世界が反転どころか一回転してもまだ足りないぐらいの混迷さ。激しい。
とにかく登場人物それぞれが、それぞれわけのわからない事件に遭遇する(決して体験するわけではなく、聞いたり少し関係したりする程度である、というところが重要)。金色の髑髏が海を流れたり、男女それぞれ五人ずつが集団自殺したり、何人も首を切って人を殺したと妄想を抱く女、骨の関わる淫靡な夢、知り合いの作家の死、何年か前の未解決事件、それに関わるのかどうか血まみれの神主やら髑髏を持つ坊主、キリスト教に逃げた牧師、ほんのり恋に落ちた(のか?)釣堀屋の親父、海鳴りに怯える女、復員服の男。そんな話が交じり合い交差し捻くれ、もうとにかくあらすじがどうのと書けるような話ではない。
「世の中には不思議なことなど何も無いのだよ」を信念とする古本屋であり神主であり、憑き物落しである<探偵役>の京極堂は、そのどの事件も<体験>することなく、所謂<安楽椅子探偵>のように事件に接し、そして<憑き物落し>と称し、事件を解決する。
京極堂シリーズは、とにかくトリックだとかがあるわけではない。物事が不思議に見えるのは、それぞれの視点である登場人物自身の歪みやら偏見やらを通して見た、<真実だと思い込んでいること>を無理矢理繋ぎ合わせようとするからであり、それは、豊富な知識と論理(あるいは構造、あるいは客体)を見ようとする冷静な目を持つ京極堂には不思議には見えないというわけだ。
京極堂は必要な情報が揃えば真実を見抜くが、それをただ知らせるだけでは無意味だと考え、敢えて遠回りをしてでも各人の<憑き物>を落とす順序にこだわる。だから京極堂の<解決>には登場人物それぞれがイライラさせられるが、京極堂は意に介さない。結局意表を衝く京極堂の<解決>に皆<憑き物>が落ち、事件は解決する。

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