古本屋探偵の事件簿の書評・感想

2059views黒夜行黒夜行

このエントリーをはてなブックマークに追加
古本屋探偵の事件簿 (創元推理文庫 (406‐1))

神田神保町にある古書店「書肆・蔵書一代」の主人である須藤康平は、新参の古書店でありながら神保町で堅実に商売をしている男である。
彼は古書店の仕事と絡めてもう一つ別の顔を持っている。それが、「本の探偵」である。
新聞広告に、「どんな本でも探します」と載せる度に依頼人がやってくる。大半は造作もない楽な依頼であるが、時折奇妙な骨の折れる仕事が舞い込んできて…。

「殺意の収集」
常連である津村は、ちょっと見せたいものがあるから出てきてくれないか、という。どんな要件かと聞いてみれば驚いた。なんと、存在だけが噂され、しかし見た者がいないと言われる幻の稀覯本である「ワットオの薄暮」の私家版を手に入れたというのである。
津村という男はとにかく稀覯本の収集に掛けては噂のある人物で、本を集めるには熱意ではなく殺意が必要だとまで言うくらいである。その津村が言うのだから確かにありえる話かもしれない。
津村が言うには、その「ワットオの薄暮」は今図書館に寄託しているという。変だなと思ったものの、とにかく現物を見にいくことにした。
しかし図書館で見ようとしたところ、どうも掏りかえられているようだということになる。「ワットオの薄暮」が入っていたはずの箱にはまるで違う雑誌が入っていたのである。

「書鬼」
発端は、一人の女性のある依頼からだった。
風光明美と名乗る女性が、シートンの動物記のある特定の版が欲しいと依頼してきた。別に珍本の類でもないから楽に見つけられるだろうと思ったが、その女性はひと言変なことをいう。見つかった場合、その本の出所は教えてもらえるのでしょうか、と。
とりあえず引き受けた須藤だったが、翌日なんと明美から連絡があり、やはり昨日の依頼は取り消してくれ、というのだ。とにかくよく分からないが、まあそんなに手間のかかることでもないから動物記をとりあえず探すことにしたが、その過程でよからぬ話を聞き込む。
まず一つは古書店業界では有名な話で、矢口という名の老人についてである。体の自由が利かず杖をついているのだが、その杖に印がついていて、その印のところまで本を買わないと気が済まない性格だったらしい。とにかく奇妙な人物なのだが、探していた動物記を買ったという人物がその矢口という老人だということらしい。
二つ目は詐欺の話である。古書店はよく目録販売をやっているのだけど、本を送っても金を振り込まないというような被害が最近結構あるらしい。
まあそんな話を聞きつつ、また別で大きな仕入先を確保した須藤だったが、どうも明美からの依頼が気になる。いらぬことに首を突っ込むことになるのだけど…。

「無用の人」
初めて見る客に声を掛けてみた。どうも本を探しているわけではなく、本の探偵の方の依頼だろうなということに気づいたからだ。
尾崎朋信という男は、「横浜新誌」という本を探しているのだという。特に珍しい本でもないからまあなんとかなるだろうと思って依頼を受けた。
一方、小高根閑一は別方面から別の依頼を受けていた。というのも先ごろ仕入れた本があるのだが、その元の持ち主が売った本の中に手紙を入れっぱなしにしてしまったかもしれない、と言ってきたのだ。それらしい本を探したが見つからず、では既に手放した本の中だろう、ということになる。恐らくこれではないかという本が近いうちにセリに出されるらしい。
ちらりとそんな話を依頼者である尾崎にしたところ、是非競り落として欲しいということだった。というわけで閑一と競りで競うことになってしまった。
結局競りでは負けてしまったが、その後尾崎から、何故「横浜新誌」に執着するのかという話を聞くことになった。
以前手に入れた「横浜新誌」の中に、稀覯本である「柳橋新誌」の第三編が隠れているのを見つけたというのである。まさしくあの、「万物画譜」の中に「楚囚之詩」が画されていたように。そのロマンを追い求めているのだ、ということだった。
さらにもう一つ告白をした。尾崎は、「柳橋新誌」を書いた成島柳北の子孫であるというのである…。

「夜の蔵書家」
本を探している人がいる、と知り合いに紹介され岩沼という名の医師のもとへ訪ねることになった。岩沼は、いわゆるビニ本の類を集めるマニアであったが、探して欲しいのは本ではないという。かつてビニ本を出版していた森田一郎という男を是非探し出して欲しい、という依頼であった。何故須藤に頼んだかと言えば、古書や印刷のことが分かっている人間でないと森田を探し出すのは難しいからだ、ということらしい。とにかく予備調査をしてみて、出来るかどうか一ヶ月時間をくれという形で落ち着いた。結局、岩沼が何故森田を探したいのか、その動機については不明だった。
しかし須藤は粘り強い調査で少しずつ真相にたどり着くのである…。

関連まとめ

本のまとめカテゴリー


コメントを書く