セックスボランティアの書評・感想

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セックスボランティア (新潮文庫)

本作は、障害者の性というものを突き詰めて取材をした作品になっています。
著者に何か特別なきっかけというようなものがあったわけではないけど、でも障害者の性が美化されすぎているな、とは感じていた。そうやって、障害者の性というものに深く入り込んでいった。
ある美大の学生が卒業制作で作成した障害者の性を扱ったビデオを見る。生きるために必要な酸素ボンベを外してまで、風俗店でセックスをしようとする障害者がいる。ネットで性処理を手伝ってくれる女性を募集する障害者がいる。障害者の性処理を手伝おうとする主婦がいる。障害者専門の風俗店があるかと思えば、そこで働く障害者の女性がいて、出張ホストを待ちわびる女性障害者がいれば、障害者に性知識を教える講師がいたりする。
また、その分野ではかなり進んでいる、オランダにも取材をしに言っている。有償ボランティア機関が性処理を手伝ってくれる女性を派遣してくれたり、市が障害者の性処理のための資金を出していたり、「代理恋人療法」なる障害者向けの治療が存在していたりと、幅広い受け皿が存在している。
日本での障害者への性の取り組みに共通しているのは、誰もが個人レベルで活動をしている、ということである。公的機関や国が動いているのではなく、NPOやまったくの個人が、独自の考えでもって障害者の性と向き合っている。それは、まだ試行錯誤と呼ぶしかない段階で、特別な成果を上げることが出来ているわけではない。しかし、そういう動きがあるということ、そしてその動きをこういう作品で広く知らせることが、大事なことなのだと思う。
障害者の性を考える上で難しいのは、障害者にとってそれは、ただの快楽ではないということだ。
僕ら障害を持たない人間からすれば、セックスはただの娯楽というかただの快楽というか、言ってみれば特別な意味を持つようなものでもない。
しかし障害者からすれば、それはただの快楽ではなく、癒しなのである。障害を持っているというだけで失ってしまったあらゆるものを埋め合わせるだけの、そういう力がある。
しかし、セックスはセックスで、現象だけ見れば癒しとはほど遠いものだ。ただのセックスだし、快楽にしか見えない。
その、現実と現象の間の差が、障害者の性を考える上で難しいのだろうと思う

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