映画篇の書評・感想

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映画篇 (集英社文庫)

本作は5編の短編の収録された作品になっています。それぞれの内容を紹介します。

「太陽がいっぱい」
僕のデビュー小説が映画化されることが決まった。編集者とその撮影現場に見学に出かけた帰り、僕は一人の女性に呼び止められる。それは永花で、僕たちは中学の頃のただの同級生に過ぎなかったが、しかし二人の出会いは要するに、ある一人の男の存在を強く意識させずにはいられなかった。
僕と龍一は同い年で、いわゆる在日朝鮮人の通う民族学校に通っていた。僕たちはそれまで全然親しくはなかったのだけど、「大脱走」という映画をきっかけにして親しくなり、以後一緒に映画を見るような仲になった。龍一はクラスにもたくさん友達がいたようだが、僕には友達と呼べるのは龍一ぐらいしかいなかった。
日本の高校に進学した僕と、持ち上がりで民族学校の高校に進学した龍一の人生は、その
あることをきっかけに小説を書き始めた僕は、龍一とかつて語り合った物語で作家デビューをし、そうして永花に再会した。そうして僕は、龍一を救おう、と決意するのだった…。

「ドラゴン怒りの鉄拳」
わたしは五ヶ月に渡ってもう外の世界には出ていなかった。連れ合いを亡くしてからだ。必要なものはネットで注文し、ひたすら家に籠って生活を続けた。
連れ合いは自殺だった。自殺の原因が分からなかったわたしは戸惑ったが、そのうちに事実が明るみになっていった。連れ合いは製薬会社に務めていたのだが、その製薬会社が副作用が発生することを知っていながら新薬を販売していたこと、そしてその秘密を知っていた連れ合いは自殺を強要されたのではないか、ということだった。
わたしが家を出るきっかけにしたのは、久々に電話のコードを繋いですぐ掛かって来たレンタルビデオ屋からの電話だった。未返却のビデオがあるのだと電話口で言われ、借りた記憶のないわたしは、恐らく連れ合いが借りたのだろうと思ってそのビデオを探し出した。そしてそれを返すために家を出ることにしたのだ。
レンタルビデオ屋の店員はいい人だった。多額の延長料金を払わせてしまったせめてもの償いなのか、店員は自分がオススメだというビデオをタダで貸してくれるようになった。わたしはそれを見、返しに行く度に感想を伝えるという習慣になった。そしてある時お茶でもしないかと誘われるようになり…。

「恋のためらい/フランキーとジョニーもしくはトゥルーロマンス」
石岡はほとんど学校に来ない。来ても授業中に寝ていたり本を読んでたりといった具合だ。隣の席になって三ヶ月だが、だからそれが初めての会話になった。
「ねぇ、一番好きな映画ってなんなの?」
僕もクラスでは浮いた存在で、だからなのかもしれないが石岡とも気があった。ある日、区民会館で「ローマの休日」を一緒に見た。その日は石岡の誕生日だったらしい。自分が誘われたことが少し嬉しかった。
それから石岡は、ある計画の話をした。弁護士をしている父親が保釈金を現金で持ち出すチャンスがある。それを奪い取ってやろう、という計画だった。誰にも言うんじゃないぞ、と口止めされたけど、もちろんそんなつもりはなかった。何故なら、僕もその計画に参加する気だったからだ。
石岡の杜撰な計画を補うべく、僕も計画に加わった。そうして僕らは大金を奪い取って逃げた…。

「ペイルライダー」
両親が離婚するかもしれない、ということに感づいてしまったユウは、やる気のない友人と共同研究を始めてしまったためにその尻拭いをしなくてはならず、レンタルビデオ屋で映画を借りた。その帰り、父親がヤクザだという同級生に絡まれてしまった。困っていると、真っ黒なバイクにのった人が現れ、それを見てビビった相手は退散していった。
バイクに乗っていたのは予想に反して小柄で、しかもおばさんだった。ニカっと笑って少年の緊張をほぐしたおばさんは、ユウをバイクに乗せることにした。ユウはそのスピードに感動し、はしゃいだ。帰りに区民会館でやっていた「ローマの休日」を見たりした。
おばさんと別れるその時、ユウは溜め込んでいたものをすべて吐き出すように泣いた。泣いて泣いて泣き続けた。おばさんは強く抱き締めてくれた。ユウはそれで元気をもらうことができた。
その夜、ある一人の受験生は自宅の前で繰り広げられたバトルを見ることになる。黒塗りのベンツに乗ったヤクザの集団と、真っ黒なバイクに乗った人の壮絶なバトルを…。

「愛の泉」
おじいちゃんを亡くしたおばあちゃんは目に見えて元気がなくなってしまった。おばあちゃんの孫に当たる僕たちは、なんとかおばあちゃんを元気付けてあげようと知恵を絞り、葬儀の時におばあちゃんがポロっと口にした、初デートでおじいちゃんと見た映画を映画館で上映してあげよう、ということに決まった。しかし、問題は山積だ…。

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