100年の難問はなぜ解けたのかの書評・感想

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100年の難問はなぜ解けたのか―天才数学者の光と影 (新潮文庫)

本作は、「NHKスペシャル」という番組の、ポアンカレ予想について扱った回を書籍化したものです。数学についてさほど知識のあるわけではないスタッフが、世紀の難問と言われたポアンカレ予想やそれを解決したペレリマン博士を追うという内容です。
ポアンカレ予想は数学史上特に有名な問題ではありますが(フェルマーの最終定理やリーマン予想と同じくらいの知名度があると思う、たぶん)、しかし何故このポアンカレ予想だけで一つの番組になってしまうのかと言うと、それはポアンカレ予想を解決したペレリマン博士の存在が非常にセンセーショナルだったからです。
かつては普通に人と交流をし、明るい青年であったペレリマンは、しかしアメリカから故郷ロシアに戻るちょっと前頃からおかしくなっていきます。自分の研究を明かさず、ひたすらストイックに数学と向き合う。人と交流をせずに、かつ数学界からも距離を置くようになっていきました。
誰もその消息を知らなくなって久しいある日、数学界に一つの噂が駆け巡りました。インターネット上にポアンカレ予想の証明がある、というのです。これまでポアンカレ予想を解いたと言う話は聞いてきたので数学者も半信半疑でしたが、その証明を書いたのがペレリマンだと知り色めき立ちました。それほどペレリマンというのは信頼されている数学者だったのです。
最終的にペレリマンの証明は正しいことが確認され、四年に一度しか与えられない数学界のノーベル賞(ノーベル賞より価値があると言われますが)であるフィールズ賞を受賞します。
しかしペレリマンは、そのフィールズ賞の受賞を拒否します。長い歴史の中で、フィールズ賞を辞退した数学者はペレリマンを除いて一人もいません。このニュースは世界中を駆け巡り、一躍ペレリマンは超有名人になります。
しかしその後もペレリマンは数学の世界から距離を置き、現在はキノコ獲りをしながら日々を過ごしている、と言われています。ポアンカレ予想には1億円の懸賞金が掛けられていて、もちろんペレリマンにその権利があるのだけど、その受け取りも拒否したとか。ペレリマンの恩師が会いたいと言っても会おうとしないという頑なさで、誰もペレリマンに近づくことが出来ないでいます。
そんなドラマがあるからこそ、ポアンカレ予想だけで一つの番組が成り立つわけです。
本書は一応数学の本ではありますが、数学的な記述についてはかなり浅いです。なんて言うことを、数学の理解力の浅い僕に言われたくないでしょうが、本書はとにかく、ポアンカレ予想なんて一度も耳にしたことがないというような人向けに、ポアンカレ予想がどんなものなのか、そしてペレリマンは一体どういうようなことをしたのかというようなことを何となく分かった気にさせるようなそんな感じの作品です。どちらかと言えば、ペレリマンというのはどういう人なのかとか、あるいはポアンカレ予想というのはどういう歴史を持つ予想なのかというような背景的な部分がメインになる作品です。

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