パラレルワールド―11次元の宇宙から超空間への書評・感想

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パラレルワールド―11次元の宇宙から超空間へ

本作は、ひも理論の第一人者であり、現代物理学の第一人者と言ってもいいニューヨーク市立大学の教授が、宇宙論について最新のデータ(日本版が2006年1月発行なので、その時点での最新データ)を盛り込みつつ、宇宙論が今どの程度まで進み、どんな議論がなされ、どんな予想が立てられているのか、ということについて、非常に面白く知的好奇心に満ち溢れた文章で綴った作品です。
本作の面白さを説明するために、前に読んだリサ・ランドール(本書ではリサ・ランダルという名前で出てくるけど)の「ワープする宇宙」(以下「ワープ」)という著書と比較してみようと思います。
本書も「ワープ」も、最新の現代物理について紹介しつつ、宇宙の仕組みについて迫るという意味では似ています。しかし両者には大分違いがあります。「ワープ」の方は、実に分かりやすくて面白い教科書、というイメージですが(これは教科書のように堅苦しいという意味ではありません)、本書は読み物として面白い、という感じです。
「ワープ」の方では、現代物理学に関してかなり難しくて深いところまできちんと説明をしよう、としています。量子論や一般性相対性理論の概略を初め、それらの理論には今どんな問題があるのかなどという点についても、非常に具体的に突っ込んで描かれます。「ワープ」を読めば、現代物理学についてどんな流れを辿ってきたのか、そしてそれぞれの理論がどういったものなのかということに関して、非常に具体的に分かるようになります。分かりやすい文章やイメージしやすい比喩などを駆使して、僕みたいな凡人でも理解出来るように描かれています。しかしそれでもやはり、かなり深いところまで突っ込んだ内容なので、多少は物理についての素養がないと、読み通して理解するのは難しいかもしれません。
一方本書では、難しい部分についてはさらっと流す、というやり方をしています。もちろん、様々なことに関してかなり具体的に説明をしています。それぞれの内容について、結構難しい部分もあるでしょう。しかし、それぞれについてそこまで深入りはしていません。
それよりも本書では、現代物理学を使うとこんな面白い可能性が出てくる、あるいはこんな突拍子もない予想が出来る、あるいはこんな未来を空想することが出来る、というような部分に焦点が当てられていきます。本書でも難しい記述はありますが、しかしそれはその後で描かれるそういう空想や予想なんかを理解するために一時必要になるから説明をしている、という印象です。これら、ただ物理学の本を読んでいるだけでは出てこない面白い話(タイムマシン・テレポーテーションは可能か、あるいはブラックホールの中に入ったらどうなるか、未来のテクノロジーではどんなことが可能になるか、もし地球が危機に瀕したら超空間へ逃げ込むことが出来るか、など)を存分に読むことが出来ます。通常こういうタイムマシンや未来のテクノロジーについては、ムー的な怪しげな内容が多くて、そういうのも面白いんでしょうけど、でもやっぱり真面目に検証されたものが読みたいものです。本書では、そういう様々なSF的事象に関して、非常に科学的厳密さを持って検証していて、しかも普通の人には思いつきもしない、あるいは時によっては想像も出来ないような奇抜なアイデアが山のように出てきて、本当に面白いですね。

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