借金取りの王子―君たちに明日はない〈2〉の書評・感想

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借金取りの王子―君たちに明日はない〈2〉 (新潮文庫)

本書は、リストラを専門に行う会社で働く村上真介を描いた「君たちに明日はない」の続編です。
本書は5編の短編が収録された連作短編集ですが、まずは大雑把に全体の設定だけ書こうと思います。
主人公は、「日本ヒューマンリアクト」という、企業のリストラを専門に行う会社で働く村上真介。30代前半くらいかな、確か。優男風で柔和な印象を与えるのだけど、人の首を切るような仕事をしているのだからそれなりに厳しい内面を持ってはいる。でも、人を物のように見て無感情に仕事を進められるわけでもない。仕事に対しては真面目だし、何よりフェアにやろうとなるべく努力をしている。
真介は、芹沢陽子という女性と付き合っている(と書くと、「君たちに明日はない」を未読の人にとってはネタばれになってしまうんだけど、許してください)。陽子はかつて真介が首切りの面接を担当した女性だった。その時の縁で付き合うことになった。陽子は関東建材業業界という団体の局長をやっている優秀な女性なのだ。40代前半ぐらいだったと思う、確か。
真介の仕事がメインで描かれつつも、陽子の仕事や、あるいは真介と陽子の付き合いなどの話も進んでいくという話です。

「二億円の女」
真介は、とあるデパートの外商部のリストラ面接をしている。外商部というのは、お客さんの家や会社に営業に行く部署のことで、かつては力を入れていた部署だったが、今ではやる気のない人間の吹き溜まりみたいなところになってしまっている。真介が今面接した野口治夫という男もそんな感じの男だ。
そんな外商部に、年商2億円をたたき出す女性社員がいる。倉橋なぎさ。30代半ばの年齢で、外商部トップの売り上げだ。真介はデパート会社の社長から、この倉橋だけは辞めさせたくないから面接は穏やかに頼む、と言われるほどだ。しかし倉橋の方は、何となく自分の仕事に疲れを感じるようになってしまっていて…。

「女難の相」
生命保険会社の大手のリストラ面接をしている真介は、松本一彦という男の履歴に目を留める。総合職で働いている、幹部候補だった男だ。だった、というのは、かつてこの男は自らの意思で出世コースから外れたとしか思えないような行動を取っているからだ。資格も取り、出世コースを順調に進んでいたにも関わらず、幹部になるために必須のある役職を降りたいと言ってきたのだ。それで現在松本はシステム開発の部署にいる。完全に出世コースからは外れている形だ。
この男はどうして出世コースをはずれるようなことをしたのだろうか…。

「借金取りの王子」
「フレンド」という消費者金融会社のリストラ面接をすることになった。離職率の高い業界だが、会社のイメージアップのための戦略的なリストラらしい。
真介は、三浦宏明という男の面接をすることになった。三浦というのは甘いマスクをした男で、慶応卒という高学歴。かつては22カ月連続で目標を達成するという驚異的な数字をたたき出していたのだが、現在は降格ぎりぎりのライン。トップは、この男はやる気がなくなったのだと判断している。
三浦宏明には、どうしても会社を辞めるわけにはいかない理由があった…。

「山里の娘」
あるホテルの従業員に希望退職を促すという仕事が来た。評判のいいホテルなのだけど、系列の二つのホテルを閉めることになった関係であぶれるものを受け入れる受け皿として空きを作っておこうということらしい。無理やり辞めさせるという仕事ではないので気が楽だ。
視察を兼ねて陽子とそのホテルに泊りに行ったときに担当してくれたのが、窪田秋子。秋子はこの面接の目的を十分分かっている。無理やり辞めさせようというものではない。それでも、辞めることを考えてしまう。私はこれからもずっと、この田舎で暮らしてていいのだろうか…。

「人にやさしく」
陽子の事務所の派遣社員が辞めることになったのだけど、派遣会社との疎通がうまくいかずトラブルになりかけている。そんなタイミングで真介は、自分の会社で派遣会社のプロジェクトを立ち上げた。首を切られた社員を受け皿としての機能を持たせることが、担当する企業との関係もよくなるしビジネスとしてもやっていけるということで決まったのだ。
そこで陽子の事務所の派遣社員を真介が見繕うことになったのだけど…。

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