死因不明社会2 なぜAiが必要なのかの書評・感想

2286views黒夜行黒夜行

このエントリーをはてなブックマークに追加
死因不明社会2 なぜAiが必要なのか (ブルーバックス)

本書は、Ai(オートプシーイメージング 死亡時画像診断)を推し進めようと活動している小説家でもある海堂尊が、Aiのトップランナーたちと共著で、現在のAi周辺事情やAiに至る歴史などについて書かれている作品です。個人的には、Aiについて、かなり深いところまで知りたい、という人には本書が向いていると思いますが、Aiについてざっくりしたところを知りたいという人には前著「死因不明社会」が向いているのではないかと思います。
本書は6つの章に分かれており、それぞれ別々の著者によって書かれています。

海堂尊「Aiの概念」
この章は、前著「死因不明社会」の大まかな要約、と言ってもいい章で、Aiについて、何故それが必要なのか、どんな利点があるのか、解剖とどう違うのか、現在どれだけの広がりをみせているのか、Ai有線主義者が目指すべきところ着地点はどこなのか、というようなことについて分かりやすく概要が書かれています。

簡単にAiについて書いておきましょう。現在日本では、死因を判定するための正式な方法は解剖しかありません。しかし日本における解剖の実施率は3%以下、ほとんどは検案(死体表面の観察)によって死因が決められている。だからこそ、死因が判明しないケースも多く、また犯罪などの見逃しも多い。
解剖がほとんど行われない理由は、時間とお金とマンパワーが必要なことだ。解剖には半日掛かり、結果が分かるまでに10ヶ月ほど掛かる。国は解剖に対する費用を拠出しないので、解剖はすべて病院の持ちだしで行われることになる。また、解剖が行える法医学者は少ない。
これらの状況を改善するのがAiだ。Aiとは、死体をCTスキャンやMRIで撮影することだ。これによって、解剖しなくても死因が判明するケースがあり、また解剖が必要かどうかの判断も可能になる。時間もさほど掛からず、また日本は世界にある画像診断機の三分の一を保有する画像診断機大国であり、Ai推進派による活動のお陰で、放射線技師たちの協力も徐々に得られつつある。既にインフラは確立していると言っていいし、実際Aiは多くの病院で既に行われている。
では一体なのが問題なのか。
Aiの問題点は、『検査費用が拠出されていない』の一点に集約される。これ以外の問題はほぼない、と言っていいようだ。インフラも整っているし、人員も確保されている。既にAiに関する様々な新技術も開発され、日本のAiの現状が海外の学会で報告され注目を浴びたりもしている。
しかし、国は予算をつけない。予算がつかないままなし崩し的にAiが導入されてしまうと、放射線科医がただ働きさせられることに医療崩壊してしまう。
Aiが、きちんとした最も有効な社会導入をされるように、Ai推進派は活動しているのである。

塩谷清司「Aiの歴史」
ここでは、X線の発見から始まり、大規模災害におけるX線利用やミイラのCTなど、Aiに至るまでの様々な画像診断に関わるエピソードを集めている。
僕が一番興味を惹かれたのは、ビートルズの話だ。EMIに所属していたビートルズの記録的なレコードの売上を、同社の電機部門はCT開発に投入し、1972年に最初の商業的CTを発表したらしいです。ビートルズと画像診断の歴史が重なるというのは面白いと思いました。

山本正二「Aiと医療」
この章では、実際のAiの運用に関わる、結構専門的な話が展開されます。Aiを実行する上での注意点や、実際に撮影されたAiの画像を載せて読影についてのあれこれが書かれていたりします。全国のAiセンターに関する記述もあります。

飯野守男「Aiと捜査」
法医学者である著者による章で、ここも、実際に撮影された画像を載せながら、Aiの実際的な運用についての話が多くなっています。また、日本の解剖の複雑な現状と、オーストラリアで行われている「コロナー」という仕組みの比較についてはなかなか面白かったです。オーストラリアには「コロナー」と呼ばれる死因究明官がいて、そのコロナーが警察に捜査を指示したり、医師に解剖実施を命令したり、検死審問を専用法廷で開いたりする、なかなか広い権限を持った役職の人がいるようです。

高野英行「Aiと司法」
この章では、主に医療事故とAiとの関わり合いについて触れられています。ちょっと前に、医師が業務上過失致死で逮捕されるケースが相次ぎました。医療関係者を戦々恐々とさせたこれらの流れは、医療者と患者双方にとって結果的によくない状況をもたらすことになる。Aiが日常的に行われるようになれば、医療事故であるのかどうかの確定もしやすくなり、また患者や遺族との対話もしやすくなるはずだ、というような話。

長谷川剛「Aiと倫理」
ちょっとこの章は飛ばし読みしてしまったなぁ。なんというか、『死』に関しての哲学的な話が展開されます。

死因不明社会2 なぜAiが必要なのか (ブルーバックス)

死因不明社会2 なぜAiが必要なのか (ブルーバックス)

  • 海堂尊,山本正二,飯野守男,高野英行,長谷川剛,塩谷清司

関連まとめ

本のまとめカテゴリー


コメントを書く